2024年12月06日

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【連載】富裕層ビジネスの世界 2022年最新版!「富裕層消費」の変化と行方

リベンジ消費に走る富裕層

新型コロナウイルスに世界中が揺れた2021年が終わり、新規感染者数も落ち着きを見せていた22年の年明け。空は晴れ渡っていたものの本格的な寒さに見舞われた東京・銀座のラグジュアリーブランドの各店舗には、長蛇の列ができていた。富裕層御用達のあるブランドに至っては、超高級店にもかかわらず入店に2時間あまり。並んでいた男性は、「新型コロナでロクに外出もできなかった。だが感染者数も落ち着き、正月だしそろそろ銀座に行ってみようかと来て見たのだが……。でもこんなに同じような考えの人がいるとは」とため息をついていた。

こうした「リベンジ消費」を始め、コロナ禍の長期化に伴って、富裕層の消費行動に大きな変化が生まれている。中でも、最近人気なのがアートの世界だ。

東京・港区のタワーマンションに居を構える40代の男性は、仲間と共に創業したIT系の会社が上場を果たし、数十億円規模の資産を手に入れた富裕層だ。以前から絵画や美術品に目がなかったが、今はまっているのが「NFTアート」と呼ばれるデジタルアートだ。「昔から絵が好きで、その延長としてデジタルアートに興味を持ちました。複製が多い中で、本物を持っているという優越感と、今後アーティストが成功していく姿を見ることができるという期待感の両方を満たしてくれるんです」

 

富裕層が支持するNFT市場が急拡大

NFTとはNon Fungible Tokenの略語で、「非代替性トークン」と訳され、簡単に言えば「電子証明書」のことだ。暗号資産にも用いられているブロックチェーンの技術を使い、アート作品の作者の情報などを記載。その作品が世界で唯一無二の“本物”であることを証明するものだ。

これが絵画や美術品とセットになったのがNFTアートだ。複製や改ざんが容易だったデジタルアートがNFTとひも付いたことで希少性を持ち、資産性が生まれたというわけ。21年に100ドル(約1万円)で出品されたアーティストの作品が6934万ドル(約75億円)で落札されたことから一躍脚光を浴びた。

NFTアートの仕組みを簡単に説明しよう。まずオークション会社などが、アーティストに代わってタイトルや制作年、所有者といった情報が記録されたNFTを発行する。その上で、デジタルデータがひも付けられたNFTアート作品はオークションにかけられ、落札者は「マーケットプレイス」と呼ばれる取引サイトに出品、愛好家たちは暗号資産で売買するという流れだ。売買額の一定割合はロイヤルティーとして作者に還元される。

NFTは何もアートだけのものではない。動画や音楽、そしてスポーツに至るまでさまざまな分野で拡大している。こうしたNFTの希少性は富裕層の所有欲に火をつけた。18年に46億円だったNFT市場の時価総額は、わずか2年で381億円にまで急拡大するほど。冒頭で紹介した富裕層の男性もマーケットプレイスで、1枚数百万円から数千万円はするNFTアートを次々に購入しているという。

「新型コロナウイルスの拡大で、海外はもちろん、外出さえままならなくなり、身近で楽しめるアートはもってこいだった。また市場で売買することもできるので、将来、アーティストが有名になって作品の価値が向上したときに売却できるという資産性も気に入っている」と男性は語る。

最近の富裕層の消費動向について、富裕層サービスの運営者は「コロナ禍で外出できなかった影響で、身近で資産性の高いものを購入する傾向が強くなっている」と指摘する。そういう意味では、不動産にも人気が集まっている。渋谷や六本木など都心のタワーマンションが飛ぶように売れている。また、テレワークの普及もあって、高級別荘を購入して移住する人も増えている。人気の別荘地である軽井沢町は、中間一貫教育の学校が設立されたことと相まって、転入者による人口増加は全国の町村でナンバーワンとなったほどだ。

ただ、「クルーザーやプライベートジェットといった“ザ・富裕層”的な商品には興味がない」と前述の富裕層サービス会社の運営者は明かす。「30〜40代の若い富裕層の多くは、見栄を張ることに興味がない。その代わり、経営者仲間などと将来成功しそうなベンチャー企業などの情報を交換し合い、応援の意味も込めて未上場株に投資している」と明かす。

 

シニアは資産を戻すことに必死

とはいえ、こうした動きは若い富裕層に限った話。別の富裕層サービス会社の運営者は、「60〜70代の富裕層は新型コロナを機に、海外で築いたり日本からフライトさせたりしていた資産をいかにして日本に戻すかということばかりを考えている」と指摘する。

かつて富裕層たちは、相続税を始め日本の税率が高いことを嫌い、シンガポールのように相続税がなかったり、税率が低かったりする国に資産をフライトさせていた。しかし、国際的な課税強化の流れを受け、海外資産に対する監視の目が年々厳しさを増している。さらに世界的な新型コロナの感染拡大によって資産の安全性に対する意識も変化しており、「目が届く日本に戻したいという富裕層が増えている」という。そのため仲間同士で頻繁に集まり、資産を日本に戻す手法を話し合っているというのだ。

国税当局に見つかれば否認される可能性が高いが、「せっかくフライトさせた資産を税金で持って行かれるのは我慢できない」(会社経営者)という富裕層がほとんどで、日々、頭を悩ませているという。

22年の年初からオミクロン株が拡大、第6波の到来も予測されている。だとすれば、こうした富裕層の消費傾向はさらに強まっていくと考えられるだろう。

 

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