2024年12月14日

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井筒屋本店のバイヤーの選りすぐりが一堂に会す名物催事、第11回は“サステナブル”を特集

バイヤーが選りすぐった商品を提案する「i plus」は今回で11回目を迎える

井筒屋本店は14~20日、バイヤーが選りすぐった商品を打ち出す「i plus(アイプラス) 井筒屋ベストセレクション」(以下、アイプラス)を開く。世界的な環境問題への関心の強まりを受け、「『サステナブル』な生活」を特集するとともに、本店限定や期間限定、初登場を軸に約66SKUを本館8階の催場に揃え、各階の売場やショップでも約13SKUを取り扱う。アイプラスは2015年に始まり、1年間に2回の頻度で実施。14日で11回目を迎えるが、品揃えの目新しさや特別感などが支持され、売上げは上昇曲線を描いてきた。流行り廃りのサイクルが速い百貨店業界で、“長寿”を期待できる催事だ。

アイプラスは、井筒屋の創業80周年記念事業の一環としてスタート。当時は専用のカタログを作成し、掲載した商品を各売場で販売する形式だった。「ファッションブックなどはあったが、各カテゴリーのバイヤーが選りすぐった商品を紹介するカタログはなく、『井筒屋なら安心』、『井筒屋なら自分に見合う』、『井筒屋に行ってみよう』と思わせる新しいカタログを作成し、新しいお客様の獲得や既存顧客の掘り起こしに繋げようと考えた」。安田優本店統括部営業推進担当が経緯と狙いを明かす。半期に1度くらいで定番化すれば、正価販売の強化に役立つという算段もあった。

カタログに掲載する商品は「お客様に楽しんで頂ける」と「お客様の生活をお手伝いする」の2軸で選び、「稀少性」や「限定」、「ニュー」を重視。「春のお出かけ」、「ヘルス&ビューティー」、「夏のトレンド」、「JAPAN MADE」、「秋の味覚を楽しむ」といったテーマも盛り込んだ。回を重ねるごとに「ファルファーレ」のバレエシューズ、「バーミキュラ」のライスポット、「ポンパドウル」や「アンテノール」で販売した井筒屋限定のパンやケーキなど、大きな売上げを記録する商品も出てきた。

転機は第5回だ。「第4回までは品揃えが各売場に限定され、カタログを作成しても売上げの確保、バイヤーの力量を示すほどの効果はなかった」(安田氏)ため、新たに約290坪の催場を使用。基本路線は変えず、「各売場で売れ続けている逸品およびヒットアイテム」、「話題の新商品」、「各売場の品揃えやポップアップショップの集積、集約」などを加えた。催場と各売場を連動させ、買い回りも促す。

第5回目は催場で初開催。規模を拡大するとともに、各階の売場との買い回りを促す

これが当たった。「エアライズ」の靴下が724足、「コトーネ」のコットンアイテムが285枚も売れ、「ココプラス」のインソールは650万円、「フィットジョイ」の軽量靴は240万円の売上げを記録。催場での売上げは1週間で4000万円を超えた。ハウスカードホルダーの売上げが88%にのぼり、年齢では百貨店の主力である60代が31%、次世代に該当する50代が22%を占めるなど、とりわけ既存顧客の買上げ促進に結び付いた格好だ。

以降、売上げは右肩上がりで、アイプラスの名は顧客に定着した。コロナ禍で昨春の第10回は秋に延期、規模も縮小を余儀なくされたが、継続。第11回は約2年ぶりに正常化する。その第11回は“サステナブル”にフォーカス。「(井筒屋本店が位置する)北九州市は2011年に国から環境未来都市に選定され、環境問題や社会的な課題について、他の都市に先駆けて取り組んできた。古着を回収し、化学分解した再生原料で衣服を作る日本環境設計の工場も、北九州市若松区響灘に位置する。井筒屋も北九州市に本社を持つ百貨店、小売業者として、地球に優しい商品や再生利用の商品などをメインに特集し、未来の世代も美しい地球で平和に、豊かに、ずっと生活し続ける社会とは何かを考える機会とする」(安田氏)。

特集では、日本環境設計が手掛ける衣料品「ブリング」のTシャツやポロシャツ、タイの女性が編む「メゾンキーズ」のバッグなどを訴求。本館地下1階の「味の逸品処」でも17~18日、売上げの一部が山の手入れに充てられる「寶屋(たからや)」の「きこりめし」を販売する(各日限定50点)。

“サステナブル”は、第12回でも主要なテーマとして取り組む方針だ。「社会に貢献する企業としてのイメージを醸成する手段の1つとして、アイプラスを活用していく」(安田氏)。

アイプラスも「(2025年の)創業90周年には記念誌として拡大したカタログを作成し、20回、30回と続けていきたい」(安田氏)と意欲を燃やす。アイプラスに限らず、正価品の販売を強化できるイベントは増やし、「お客様に楽しんで頂き、『井筒屋なら何か良いモノがある』と定着させる」(安田氏)。