2021年03月07日

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コロナ禍で富裕層がお金をかける「健康」と「教育」

2021/02/01 5:00 am

銀座での飲みをやめた富裕層

「感染者数が急増して、緊急事態宣言が発出されてから、すっかり銀座に飲みに出なくなった」

今年1月末、中小企業を経営する男性はこのように語った。保有資産は50億円規模。以前は毎晩のように銀座のクラブに飲みに出掛けては、1回当たり30万〜50万円を支払い、時には100万円を超えることもあったという。

それだけ飲み歩いていた男性が、出掛けなくなったというから驚きだ。「飲みに行くのはほとんど習慣だったが、『外出はできるだけ控えるように』と社員に向かって言っている社長が、飲み歩いてコロナに掛かったりしたらさすがにマズいだろうと思うようになって出掛けなくなった。実際、飲みに出なくなったら、俺は今までどうしてあんな大金を毎日使っていたんだろうと思うようになった」と男性は笑いながら語る。

富裕層事情に詳しいファミリーオフィスを運営する男性は、「新型コロナをきっかけに、60代以上の富裕層のお金の使い方が変わってきた。感染した場合のリスクが高いことから派手に飲み歩くのをやめた。プライベートジェットだ、クルーザーだと高い買い物をしていた人たちも、そうしたものにお金を使わなくなった。資産の使い方について見直すきっかけになった」と明かす。

幹細胞治療が大人気

では、彼らはどういったものにお金を使っているのだろうか。

「やはり医療だ。中でもアンチエイジングや予防医療といったものに関心が高い。以前から関心は高かったが、新型コロナによって加速したイメージ」とファミリーオフィスの運営者は語る。中でも人気が高いのは、「幹細胞治療」に代表される「再生医療」だ。幹細胞とは、分裂して自分と同じ細胞を作る能力と、別の種類の細胞に分化する能力を持ち、際限なく増殖できる細胞のこと。そうした能力を持つ幹細胞を培養した後、数回にわたって点滴で体内に注入する。港区のある病院では、3回の点滴に加え、遺伝子検査や肌の調子が良くなるというクリームも処方され、金額は合計で約300万円だという。

ただ、こうした医療はまだ研究段階で、医療としては確立されているとは言い難い。そのため、効果も体調が良くなる、肌の調子が良くなる、寝起きが良くなる、足腰が痛くなくなるなど、どのクリニックも「病気に効く」とは謳っていない。どちらかといえば、美容やアンチエイジングといったものを全面に押し出している。

それでも「富裕層たちはお金に糸目をつけない」(ファミリーオフィス運営者)という。「富裕層の多くは『日頃からケアして免疫力を高め、新型コロナにうつらないような体を作っておきたい』と口を揃える。そのため、まだ認められていない医療であっても、新しいサービスがあると聞けば、たとえ金額が高くても試す富裕層が増えている」とファミリーオフィス運営者は明かす。

全体医療を駆使した健康診断も

そうしたニーズを捉えて、富裕層をターゲットにした会員制リゾートクラブ事業を展開するリゾートトラストが、東京、名古屋、大阪など7つの拠点で実施している健康診断サービスも人気だという。このうち東京では、東京大学医学部附属病院に検診を委託、現役医師による1日検診が受けられる。AIを応用した先端医療技術を駆使している他、現役の東大病院の医師2人がレントゲン写真を読影するという徹底ぶりだ。

がん治療にも注力しており、「東京ミッドタウン先端医療研究所」では特許技術を用いた免疫療法を提供。「東京放射線クリニック」では、治療が困難とされるような転移がんに対しても副作用の少ない放射線治療を提供するなど、先進的ながん治療から、日常的な健康のサポートまで、幅広いサービスを提供している。リゾートトラストの会員の中には、こうした最先端の医療サービスを受けたいからとの理由で入会した人も数多くいて、人気を博している。

子どもの教育に走る若い富裕層

一方、若い富裕層たちも変化している。そもそも、30代、40代の富裕層は派手な遊びに興味がなかった。そんな彼らが最近、熱心にお金を使っているのは子どもの教育だ。もちろん、以前から子どもの教育について熱心だったが、最近、さらに加速している。

「新型コロナで将来が見通せない中で、子どもたちには十分な教育を施して、どのような時代においても生きていける能力を身につけさせたい」と語る富裕層の男性には小学生の子どもが2人いる。いずれも私立の小学校に通わせ、平日は塾のほか、英語、水泳、プログラミングなどほぼ毎日のように習い事をさせており、教育費は月に100万円はくだらない。

新型コロナが収束するまでは難しいが、できるだけ早く2人ともをスイスのボーディングスクール(全寮制の寄宿学校)に留学させる予定だ。その費用は通わせる学校にもよるが、数千万円かかるのが当たり前の世界。「いくら費用がかかってもいい。それでも行かせたい」とこの富裕層は語る。

「私も留学経験者ではあるが、留学したのは大学時代で遅すぎたと感じている。今からの時代、子どもの頃から国際感覚を身につけなければ。特にコロナで、いつ何が起きるかわからないと感じており、子どもの教育もできるときにやらせてあげたいと思っている」コロナをきっかけに、富裕層を取り巻く環境も大きく変わり、お金の使い方も変化を遂げているといえる。