2021年12月09日

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富裕層はなぜコロナ禍でも増加しているのか

増加を続ける富裕層数

新型コロナウイルスの長期化に伴って2度目の緊急事態宣言が発出され、飲食店を中心に営業時間の短縮に追い込まれるなど経済自体は大きな影響を受けている。ところが、そうした状況下でも、金融資産を1億円以上保有するいわゆる「富裕層」が増加しているという。そもそも富裕層はここ数年、増加傾向にあった。野村総合研究所が2年に1度発表している日本の富裕層に関するレポートを見るとそれは明らかだ。

これは、預貯金、株式、債券、投資信託、一時払い生命保険や年金保険など、世帯として保有する金融資産の合計額から負債を差し引いた「純金融資産保有額」で区分、資産保有額とその世帯数をまとめたもの。そのうち、資産保有額が1億円以上5億円未満の「富裕層」と、5億円以上の「超富裕層」の世帯数と、資産保有額の推移が以下のものだ。

これを見れば明らかだが、2013年から富裕層のや超富裕層は右肩上がりで伸びている。背景にあるのは安倍晋三前首相が進めたアベノミクス。その是非は置いておくとして、株高が進み、資産価値が上昇したためだ。

例えばある会社経営者は、以前から株式投資をしていたことに加え、上場したことで多くの自社株を保有。そうした株が、アベノミクスによる株高で大きく値上がりして資産規模が5億円あまりまで膨らみ、めでたく富裕層の仲間入りを果たした。そうした人が、かなりの数にのぼるわけだ。

ちなみに20年12月に発表されたレポートによると、直近の2019年は富裕層の世帯数が124万世帯で保有資産の合計が236兆円、超富裕層は8万7000世帯で97兆円となっている。その結果、富裕層と超富裕層を合わせた世帯数は、05年以降最も多かった17年の合計世帯数より6万世帯増加。資産保有額も34兆円となっている。

こうした状況について野村総研は、「株式などの資産価格の上昇により、富裕層・超富裕層の保有資産額が増大したことに加え、金融資産を運用している準富裕層(5000万円以上1億円未満)の一部が富裕層に、そして富裕層の一部が超富裕層に移行したため」としている。

コロナ禍でも増加する富裕層とその資産

では、コロナ禍に見舞われた20年以降、富裕層、超富裕層はどのように推移するのだろうか。

富裕層の動向に詳しい専門家によれば、「短期的に見れば、世帯数、資産保有額ともにしばらくの間は増加するだろう」と見ている。というのも、各国政府が新型コロナウイルス対策でさまざまな金融支援策を実施したことで、世界にはマネーがあふれているからだ。

そのじゃぶじゃぶにあふれたマネーが、株を始めとする金融資産にどっとマネーが流れ込み、株価は大きく上昇。それ以外の金融資産についても資産価値は膨張を続けている。富裕層は株を中心にこうした金融商品で資産運用しているため、富裕層や超富裕層の資産保有額も大きく膨らむ。さらに、これまで準富裕層だった世帯が富裕層へ移行する構図は変わらず、世帯数、資産保有額ともに拡大すると見ているわけだ。

上京は政府の支援策次第

ただ、そうした状況は「しばらく続くだろうが、いつまでかは不透明」と専門家は言う。

「コロナ禍の長期化に伴って、各国政府の金融支援がいつまで続くのか。そうした支援策が息切れしたとき、企業倒産が相次ぐなど景気が一気に冷え込む可能性がある。そうなれば株価も下落、富裕層の資産が大きく毀損する可能性はある」と専門家は言い、「しばらくすると富裕層になった人たちが転落し始めるかもしれない」と指摘する。

当然、富裕層や超富裕層もそうした可能性については既に意識しており、これまでは「分散投資」「長期投資」を基本としていた投資行動を大きく変化させていると、資産運用の専門家は口を揃える。