アラ商事、生地の受注を本格化
展示会では初めて、入口付近の目立つ位置に生地や生地を使ったネクタイ、マフラー、スカーフ、ジャケットなどを並べた
アラ商事は、グループ会社のアルファテックスとの連携を強め、生地の受注を本格化する。ネクタイの製造で培ってきた技術を駆使して繊細で独自性のある生地開発を進め、衣料品や雑貨などのメーカーのOEMを請け負う。10月6~9日に開いた来春夏企画の展示会では初めて、ネクタイでなく生地のバリエーションを入口付近で紹介。招待客も、ネックウエア以外のカテゴリーのバイヤー、OEMの担当者らを増やした。ビジネスウエアのカジュアル化が加速し、主力のネクタイの売上げが漸減していく中、新たな需要を開拓して収益力を高める。
展示会の入口付近には、サッカー生地やデニム生地、シルク糸をジャカード織機で織った生地を起毛した「シルクスフレ」と、それらを用いたネクタイやマフラー、スカーフ、ジャケットなどを紹介。多種多様な要望に応えられる“守備範囲”の広さを示した。
実際、シルクの縫製技術に裏打ちされた生地は独自性が高く、世界的なブランドからの受注もある。アルファテックスではシルク、ジャカード、ポリエステルの生地のOEMが増えており、ネックウエア以外のシェアが上がってきた。同社は「もちろん、ネックウエアの拡販にも注力していくが、ネクタイで培ったシルクの縫製技術を生かし、新しいニーズを取り込む。これまではアルファテックスに頼る部分が多かったが、アラ商事としてもOEMを獲得するために営業活動を積極化していく」意向だ。
OEMだけでなく、クラウドファンディングも活用。いわゆる「ワンマイルバッグ」など従来の枠にとらわれないアイテムを提案し、販路の拡大を急ぐ。
新たな収益源の確立を目指す一方で、成長領域にも布石を打つ。具体的には扇子だ。今夏の売上げはリアル店舗もインターネット通販サイトも好調。特に楽天市場では、安価な扇子が目立つ中、クオリティの高さが評価されて売上げを伸ばした。同社は「女性はハンディファンを使い、扇子は陰に隠れつつあるが、男性は(周囲の目を気にして)そうではない。リアル店舗も売場で扇子をしっかり訴求してくれて、定着したといえる」と手応えを実感。来夏には、ブランドのラインナップを増やし、さらなる伸長を狙う。

クオリティの高さが支持され、扇子の売れ行きは好調に推移する
ビジネスシーンのカジュアル化で逆風が吹くネクタイも、競合他社の減少などで受注は増えている。品揃えの魅力を高め、自家需要と贈答需要を取り込む。
オリジナルブランドの「アールダム」は、来春夏のトレンドテーマとされる「リフレッシュメント」「リセット」「アップデート」などを物づくりに落とし込んだ。品質の高さで知られるブラタク社の生地を使った「クオリティーライン」では、オーソドックスながらインパクトのある柄を用意。モチーフ柄を施す「セレクトライン」では、リスやナマケモノを採用してリラックス感を演出する。

オリジナルブランド「アールダム」は、品質の高さで知られるブラタク社の生地を使った「クオリティーライン」で、オーソドックスながらインパクトのある柄を用意
また、新社会人向けの商品をあらためて強化。デザインはオーソドックスや定番に絞り込み、ネクタイに不慣れな人でも大剣と小剣の長さを最適化しやすい「ジャストフィットタイ」加工も施す。新社会人に限らず、「朝の時短に適うネクタイ」としてもアピールする。
日本らしさをモダンにデザインで表現するオリジナルブランドの「エー・アール・エー」は、訪日外国人の買上げが増えており、扇子やワンマイルバッグなどで品揃えを拡充。勢いに弾みを付ける。
6000円台や7000円台が軸で、他のブランドに比べて値頃感があるオリジナルブランドの「フォスカ」は、若年層も買いやすく売上げが安定している。来春夏に向けては、大剣と小剣の柄が異なる「コンビネーションタイ」でアイスクリームや桜の柄を投入。個性的なデザインで、贈答需要を取り込む。ネット通販サイトでは注文の約8割が贈答用のパッケージを指定しており、対応を強化する。

「ミッシェルクラン」などライセンスブランドは総じて堅調だ
今春夏に展開を始めた「ミラ・ショーン」や「ムーミン」をはじめ、「ミッシェル クラン」「ポール・スチュアート」「ダックス」「ピエール・カルダン」といったライセンスブランドも総じて堅調だ。土台が安定しているからこそ、来春夏は果敢なチャレンジで飛躍を期す。
(野間智朗)