資生堂、再成長に向けた基盤整備に注力 構造改革を加速
アメリカ以外の市場はおおむね回復傾向を示している(写真は「SHISEIDO THE STORE」)
資生堂は先だって、今期(2025年1~12月)の連結最終損益が約520億円の赤字になる見通しだと発表した。従来の黒字予想からの下方修正で、赤字額としては過去最大だ。しかし、同社は2カ年(25~26年度)の中期経営戦略で構造改革に取り組んでおり、その成果も徐々に現れ始めた。現在を「成長への基盤形成」の時期と位置付け、再成長へと舵を切る構えだ。
同社の25年1~9月期連結業績は、売上高が6938億円(前年同期比4.0%減)、営業損益が333億円の赤字、純損益が439億円の赤字だった。ただし、減損損失など一時的な損益を除くコア営業損益は300億円(9.7%増)の黒字だった。
赤字の主因は中国・トラベルリテール事業の減収と、スキンケアブランド 「ドランク エレファント」 の減収による、米州事業におけるのれん減損損失(468億円)である。通期予測は売上高を9650億円(3%減)に、営業損益を420億円の赤字に修正した。それぞれ従来予想から300億円、555億円下回る。コア営業利益は変わらず365億円に据え置いた。
「選択と集中」でコスト削減に成果
同社は中期経営戦略「アクションプラン 2025-2026」において、①注力ブランドへの選択②集中と高収益構造の確立——の2つを最優先課題と定め、取り組んでいる。具体的には、「コア3ブランド+ネクスト5ブランド」に経営資源を集中し、それ以外の事業や子会社の整理、統廃合を実施。本社の早期退職支援プラン、子会社の機能統合や整理、R&Dやクリエイティブ機能の再編などを行っている。
これにより、2026年には約250億円のコスト削減効果が見込まれる。25年1~9月期でコア営業利益が前期比約10%増を確保できたのも、構造改革による固定費削減やコスト管理の効果が大きい。
米州事業の不振に関しては、今年CEOに就任したアルベルト・ノーエ氏による新マネジメント体制で、黒字化を急ぐ。人員削減やオフィスフロアの縮減、間接購買の最適化など、構造改革の主要アクションは実行済みだ。来期はドランク エレファントのブランドポートフォリオの再定義など、攻めの施策でトップラインの押し上げを狙う。
(都築いづみ)