2024年12月02日

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有楽町と丸の内の結節点で「新東京ビル」が大改装中

新東京ビル1階北西角(改装後イメージ)

有楽町の玄関に位置する「新東京ビル」が、丸の内との結節点で大規模リニューアルを進めている。2022年8月に始まったリニューアルは、外装・内装の改修にとどまらず、各フロアの改装からエレベーターホール、屋外空間(外構部)、アートの開設まで及ぶが、1階北西角地約1000㎡の大規模店舗区画と3・5階の改装が完了。隣接する約220㎡の区画には、都内初の旗艦店となる「メゾンカカオ」が今冬にオープンが予定され、全体の完了は25年度中を予定する。新東京ビルのある丸の内エリアは、三菱地所グループが20年以降の丸の内エリア(大手町・丸の内・有楽町)の街づくりを「丸の内NEXTステージ」と位置付けている。同エリアにある既存ビルのリニューアルやリノベーションが進められており、今回の新東京ビルの大改装もその一環だ。

エレベーターホールにラウンジスペース設置

新東京ビル(地下4階~地上9階、延床面積10万2768㎡)は、1963年6月に竣工。今回の大改装では“人を惹きつける新東京ビル”をコンセプトに、オフィスワーカーだけでなく、全ての来街者に開かれたビルを目指す。2階以上の各階エレベーターホールには、オフィスワーカーが自由に使えるラウンジスペースを設置。階段で気軽に移動・昇降が可能な既存ビルならではの動線に着目し、各階で異なるコンセプト・過ごし方が楽しめるデザインとする。また、リサイクル素材の壁面タイルを採用するほか、熱負荷の低減を図るなどで環境配慮を重視したリノベーションを実施する。

外装は昭和30年代のモダニズム建築の1つである横連窓のデザインは残しつつ、窓ガラスを「Low-E複層ガラス」に全面更新して熱負荷を低減。省エネ性能の向上を図る。内装は、新東京ビルの特徴である1階中央部の円形照明、床・壁のモザイク調のアートタイルは価値あるヴィンテージとして残し、基準階においては開業時からの素材を生かすなど、ストック型リノベーションを随所で展開。屋外空間(外構部)については、1階のコーナー部に新たにピロティ空間を創出し、これまで建物のファザードによって閉じられていた空間を、就業者にも来街者にも平日・休日問わず幅広く利用できる開放感ある屋外空間にリニューアルする。

基準階にアート作品を設置

アートについては3、5階の基準階に約30点を設置。全ての作品に分かりやすい解説も付けた。3階は「Villa」、5階は「Lounge」と各階のフロアコンセプトから関連・連想される作家・作品を選定。通常は廃棄される周辺ビルの仮囲いアートをリメイクした作品も導入した。

新東京ビルは20年に先行して4階を全面リニューアルし、イノベーション拠点「Shin Tokyo 4TH」をオープンした。Shin Tokyo 4THには入居企業自らがフロアやビル、街を触媒として化学反応を起こし、社会に対して新たな価値を生み出すことを意図し、DXやオープンイノベーションを促進する企業を誘致した。

すでに丸の内NEXTステージによって、丸の内エリアにある既存ビルのリニューアルやリノベーションが進んでいる。58年に竣工した「大手町ビル」は、22年の大規模リノベーションで外装デザインを更新し、約4000㎡の屋上に緑あふれるワークスペースなどを整備。就業者やエリアワーカー向けの共用ラウンジ・テラスも開設した。「新国際ビル」と「新日石ビル」については、22年に有楽町再構築を体現する既存ストックの活用プロジェクトとして、両ビル間の路地空間をリニューアル。都市の隙間の公園機能として「有楽町『SLIT PARK』」を整備し、街に開かれた拠点としてキッチンカーや路外ショップによる飲食・物販サービス、イベントの開催などができる多目的空間が誕生した。

そのほかにも、02年2月に竣工した「丸ビル」は開業20周年を迎えた22年から翌春にかけて段階的にリニューアルを実施し、その目玉である地下1階のフードゾーン「マルチカ」を一新。07年に竣工した「新丸ビル」は開業15周年を迎えた22年から翌春にかけた段階的な改装で、7階の「丸の内ハウス」を一新した。「三菱ビル」(73年竣工)と「丸の内二丁目ビル」(64年竣工)は、24年7月にビル1階外構部と通路空間を改装した。大規模な花壇を設置して、月替わりで季節の植物を彩るプロジェクト「Marunouchi Bloom Way」を本格始動させている。

(塚井明彦)