2024年05月04日

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アデランスの電動シャンプーブラシ、40~50代男性を開拓

ヘアサロンやヘッドスパなどで髪を洗ってもらった時の心地よさを提供する「アワニスト」

アデランスの電動シャンプーブラシ「AWANIST(アワニスト)」が、じわり売れている。専用のシャンプーを注入して「FOAM」ボタンを押すと約15秒で濃密な泡が立ち、「SCALP」ボタンを押すと約3分間に亘り頭皮が刺激される仕組みで、毛穴に詰まった皮脂や老廃物を浮き上がらせて落ちやすくさせる機能性、まるでヘアサロンやヘッドスパで洗髪されているかのような心地よさなどが購買意欲を喚起。主な購入者は30~50代で、とりわけ40~50代の男性が多い。メインターゲットは20~30代の女性で、同社にとって良い意味で想定外だ。毛髪や頭皮の悩みを抱える男性に“刺さった”、いや男性を優しく包み込んだアワニストが、新たな商機を切り拓いた。

本体、シャンプー、トリートメントからなる。どのような空間にもなじむ、ナチュラルなデザインだ

アワニストの開発は約2年前にスタート。「新型コロナウイルス禍では『(感染が不安で)美容室に行けない』という声が多く、イエナカを楽しめる何かを提供できないかと考えた。当社には自宅で手軽にヘッドスパが可能な『バスタイムエステ スパニスト』があるが、シャンプーを付けて泡立てた頭皮に当てる方式。機器から泡が出れば面白く、洗髪の時間が楽しくなる。コロナ禍だからこそ、遊び心は大事。支持を得られると思い、ゼロから設計した」。飯野貴子e-ビジネス室マネージャーは経緯を明かす。

ただ、飯野氏は機器に精通するわけではない。アイデアを具現化するまでには、多くの問題が立ちはだかった。まず、毛穴に入り込んで汚れを落としやすくするマイクロサイズの泡をつくりたかったが、アデランスの既存のシャンプーでは成分の特性上難しい。そこで、上質で豊富な泡が立つように成分を組み合わせたシャンプーを用意した。

次に頭を悩ませたのは、シャンプーの量の調整だ。1回分の泡で、どれだけ毛髪や頭皮を洗えるか――初めてゆえに未知数だった。研究を重ね、短髪の男性ならシャンプーのプッシュは1回、長髪の女性なら3回が最適になるように調整。利用者がシャンプーの量を迷わずに済むようにした。

最も苦労したのは形状だ。手の大小、利き手の左右にかかわらず、老若男女が使いやすい形や重さが求められた。飯野氏は粘土を購入して試行錯誤。誰もがスムーズに手に収められる形状、3分間の使用でも疲れない重さにたどり着いた。

この3分間もポイントだ。飯野氏は「ある調査によれば、髪を洗う時間の平均は50秒とされるが、当社のヘアサロンは3分間。3分を費やすと、仕上がりに明確な差が出る」と説明する。FOAMボタンを押してから泡が立つまでの時間も熟慮。「速過ぎず遅過ぎず、シャンプーがタンクに残って次に使う時に影響しないようにも工夫した」(飯野氏)。その徹底ぶりは、納品の直前に20秒から15秒に変更したほどだ。

シャンプーを注ぎ、「FOAM」ボタンを押すと15秒できめ細かい泡が立つ

ブラシの部分も長さから太さ、硬さ、配置までベストを目指し、複数のパターンを比較検討した。飯野氏は「ブラシが細過ぎたり、配置が狭過ぎたりすると髪が絡まる」と重要性を指摘する。

価格は本体が3万2780円、シャンプーが4180円、トリートメントが3850円。シャンプーは3プッシュで55回ほど使えるという。飯野氏は「品質にこだわり、長く使ってもらえる。髪、頭皮のため、自分へのご褒美にしてほしい。ヘッドスパに通うより安価だ」と強調する。

アワニストは4月17日、クラウドファンディングサイト「Makuake(マクアケ)」で先行販売。CFを選んだのは、メインターゲットに据える20~30代と親和性が高いと判断した。売れ行きは良好だったが、嬉しい誤算は40~50代の男性の支持だ。他の年代や性別と比べて、ずば抜けて多かった。

新しい需要も引き出した。複数の購入者から「高齢の両親に使ってあげたい」という声が届いた。つまり、介護需要だ。

7月31日には、アデランスのインターネット通販サイトでも販売がスタート。注文は着実に増えている。8月15日からは光文社のネット通販サイト「kokode.jp」の「美ST」のページでも販売されており、9月23~24日に開かれるイベント「Makuake ミライマルシェ2023」にも出品。アワニストの拡販につなげる。

「今、美容の分野では髪や頭皮の悩みが注目されているが、簡単には解決されない。ゆえに商機がある。次の展開はまだ明かせないが、アデランスグループの最大の使命は、毛髪・美容・健康のウェルネス産業を通じて、世界中の人々に夢と感動を提供し、笑顔と心豊かな暮らしに貢献すること。私は美容と健康の分野で、笑顔を届けられる商品を開発していきたい」と、飯野氏。アワニストを皮切りに、さらに商品開発を加速する。

(野間智朗)