2024年04月29日

パスワード

購読会員記事

森ビルの「麻布台ヒルズ」が11月24日開業、ヒルズの“未来形”を実現

11月24日に開業する「麻布台ヒルズ」。約330mと日本一の高さのタワーや、目を引くデザインの低層棟、豊かな植栽が来街者を迎える

森ビルは8日、「麻布台ヒルズ」を11月24日より順次開業すると発表した。緑あふれる広場を中心に日本一の高さとなる超高層タワーやレジデンス棟などからなり、オフィス、商業施設、住宅、ホテル、文化施設、インターナショナルスクール、医療施設などを収容する。総延床面積約86万1700㎡、オフィス総貸室面積約21万4500㎡、店舗面積約2万3000㎡で店舗数は約150店、住宅戸数約1400戸、ホテルの客室数は122室。多様な都市機能を集約したコンパクトシティの形成により「ヒルズという街」のさらなる進化とともに、新しい都市生活の在り方を目指す。一部の施設は12月以降の開業で、年間来街者数は3000万人を見込む。

8月8日に「麻布台ヒルズ」で行われた説明会に登壇した、森ビルの辻慎吾代表取締役社長

麻布台ヒルズは、森ビルおよび日本郵便が参加組合員として参画した虎ノ門・麻布台地区市街地再開発組合が開発した。区域は「アークヒルズ」に隣接し、「六本木ヒルズ」と「虎ノ門ヒルズ」の中間エリアに位置する。「 “Modern Urban Village”~緑につつまれ、人と人をつなぐ『広場』のような街~」をコンセプトに、「Green&Wellness」をテーマに掲げ、環境や健康の重要性が増す現代において、心身共に豊かに生きられる新しい都市像を提案する。

建物の高層化により広大な土地スペースを確保。圧倒的な緑地空間の創出を可能にした

それを最も体現するのが、約8.1haの広大な計画区域に広がる約2万4000㎡の緑地だ。「森ビルはアークヒルズ以降、一貫して『都市の緑化』に取り組んできた」と、辻社長は明言する。街の中央にシンボルとして位置するのは、約6000㎡の緑豊かな「中央広場」で、芝生の広がるオープンスペースは、人々の交流や憩いの場として賑わいを創出する。建物低層部の屋上緑化や、季節の移ろいが感じられる約320種の樹木に加え、敷地内には菜園や果樹園なども設置。都心の既成市街地でありながら、豊かな自然環境を実現した。街全体で、全ての電力を再生エネルギーでまかなうことを目指す国際的な企業連合「RE100」に対応する再生可能エネルギー電力を100%供給するなど、サステナブルな都市への取り組みも推進する。

中央広場の周囲に建つのが、約330mと日本一の高さを誇る「麻布台ヒルズ森JPタワー」(地下5階~地上64階建て)、「麻布台ヒルズレジデンスA」(54階建て)、「麻布台ヒルズレジデンスB」(地下1階~地上64階建て)、「ガーデンプラザA~D」。延床面積は約86万1700㎡となる。森JPタワーと2つのレジデンス棟の外観はアメリカのペリ・クラーク・アンド・パートナーズが、曲線がユニークな低層部とランドスケープはイギリスのトーマス・へザウィック氏がデザインを手掛けた。

入居施設の中でも特徴的なのが、医療機関と教育機関だ。「慶應義塾大学予防医療センター」は、新宿区・信濃町から移転開業する。施設面積は約3900㎡で、人間ドックフロアでは最新の医療機器による各種検査メニューと大学病院と連携したアフターケアサービスを提供する。さらに「パーソナライズド予防医療」をコンセプトにしたメンバーシップサポートを実施。受診者一人一人に合った健康プログラムを継続的に展開する。

都内最大級の生徒数となるインターナショナルスクール「ブリティッシュ・スクール・イン 東京」。8月30日に開校する

30日に開校するインターナショナルスクール「ブリティッシュ・スクール・イン 東京」は、創立34年目の歴史を持ち、英国式の教育カリキュラムを提供する。都内最大級となる約740人、60カ国以上の国籍の生徒が在籍。約1万5000㎡の敷地面積には、図書館や音楽室、各学習のためのスタジオに加え、体育館や屋内プール、グラウンドやダンススタジオなど、子供達が伸び伸びと学べる空間を備える。

辻社長は「東京は国際都市間競争に勝たなければならない。東京がグローバルプレイヤーに認められるためにも、都市環境の充実は急務」と強調する。海外からの企業や優秀な人材確保を目指すと同時に、外国人ビジネスワーカーやその家族の生活を支えるための環境整備を重視する。

約2万人の就業者を見込むオフィスの総貸室面積は、約21万4500㎡。入居企業はIT系や金融などで半数が決定しており、年度内の満床を目指す。日本初となるベンチャーキャピタルの集積拠点「Tokyo Venture Capital Hub」も設置。約70社を集めスタートアップを支援する。森JPタワーの33~34階には、ワーカー同士が企業の垣根を越えて交流できるラウンジスペース「ヒルズハウス」も用意し、「日本経済活性化の起爆剤となることを目指す」(辻社長)。

商業施設は、ファッション、フード、ビューティー、カルチャー、アート、ウェルネスなど約150店が集結。店舗面積は約2万3000㎡となる。ファッションでは「エルメス」や「カルティエ」などのラグジュアリーブランドが10店オープンする。フードでは神楽坂の名店「神楽坂 鉄板焼 中むら」や、フレンチガストロノミー「フロリレージュ」などが出店し、ワンランク上の食が楽しめる。そのほか、フレグランスメゾン「フエギア 1833 麻布台」、会員制パーソナルトレーニングジム「デポルターレクラブ」、ミュージアムのようなフラワーショップ「ニコライ バーグマン フラワーズ&デザイン」など、多彩なショップが登場する。

厳選された食材を集め、東京の豊かな食文化の発信、提案を行う「麻布台ヒルズマーケット」

中央広場の地下には、約4000㎡の大規模なフードマーケット「麻布台ヒルズマーケット」が開業する。生鮮食品から惣菜、グローサリー、ワイン・リカー、ベーカリー、スイーツ、生花店まで31の専門店が揃う。販売だけでなく、来街者が調理法を学んだり交流できたりする場所づくりに注力した。「出店する専門店と商店会をつくり、麻布台ヒルズ内外の店舗やシェフ、学校や企業などとも協業し活動を進めていく」(辻社長)予定。

レジデンスAの1~13階には、ホテル「ジャヌ東京」がオープンする。世界各地のラグジュアリーリゾートを手掛ける「アマン」の姉妹ブランド「Janu(ジャヌ)」の世界初となるホテルで、客室数は122。ジムやスパなど約4000㎡のウェルネス施設を充実させた。

「アマン」とコラボレーションした、わずか91邸の「アマンレジデンス 東京」

住居は、森JPタワー、レジデンスA・B、ガーデンプラザに入る。専有面積18万2800㎡、戸数1400戸、居住者数は約3500人。「都心に居住する」ことにこだわってきた森ビルならではの、住宅事業のノウハウが生かされた生活空間を用意する。森JPタワーの54~64階には、アマンと組んだ「アマンレジデンス 東京」(91邸)も入る。

2024年1月にオープンする「森ビル デジタルアートミュージアム:エプソン チームラボボーダレス」

「街全体がミュージアム」をテーマに掲げ、多様な文化の発信拠点となることも目指す。総施設面積約9300㎡のデジタルアートミュージアムとギャラリーを中核とし、区域内にも数々のパブリックアートを設置する。ガーデンプラザBの地下1階には、「森ビル デジタルアートミュージアム:エプソン チームラボボーダレス」が東京・台場から移転。来年1月に開業する。年間来館者数230万人を記録した没入型のデジタルアート体験が楽しめる施設で、アート集団「チームラボ」による新たな作品発表も予定する。さらに美術館仕様の施設・設備を備えた「麻布台ヒルズギャラリー」や、集英社が手掛けるギャラリー「集英社マンガアートヘリテージ」などもオープンする。

麻布台ヒルズは、1989年に「街づくり協議会」を発足して以降、今回の完成・開業までにおよそ35年という長い年月を要した。バブル崩壊や東日本大震災、新型コロナウイルス禍など経済・社会的な情勢変化に加え、特異な地型によりプランニングも非常に難しかったという。約300件の権利者との合意形成にも、多くの時間を要した。辻社長は、麻布台ヒルズを「これまでのヒルズ建設で培った『ヒルズの未来形』」と位置付ける。「時間はかかったけれど、とても良い街ができた。出来上がった後に色々な人に愛されれば」と、開業に期待を寄せた。

(中林桂子)