2024年02月26日

パスワード

購読会員記事

東急グループの渋谷まちづくり戦略「Greater SHIBUYA2.0」(中)

東急グループ渋谷まちづくり戦略“Greater SHIBUYA”最新情報発表会

2012年に開業した「渋谷ヒカリエ」をリーディングプロジェクトとして、100年に1度という東急グループによる渋谷再開発プロジェクトが進行している。同グループによる渋谷の街づくりは第2ステージに入り、今後も渋谷駅前や周辺部に再開発事業の完成が続く。そこで「東急グループの渋谷まちづくり戦略」を3回に分けて取り上げる。2回目は、東急不動産執行役員都市事業ユニット渋谷開発本部本部長の黒川泰宏氏が開設した「東急不動産の広域渋谷圏における新たな取り組みと開発を進める4つのプロジェクトについて」を紹介する。


東急不動産の4つの開発プロジェクトを語る黒川泰宏本部長

現在当社は広域渋谷圏内(渋谷駅から2.5km)において渋谷桜丘エリアで「Shibuya Sakura Stage」、原宿・神宮前エリアで「ハラカド」(神宮前六丁目地区第一種市街地再開発事業)、代官山エリアで「Forestgate Daikanyama(フォレストゲート代官山)」、代々木公園エリアで「代々木公園Park-PFI計画」の4つの新規開発プロジェクトを推進中です。これら4つのプロジェクトが2024年度に竣工・開業し、活動拠点が面的に広がることにより、当社の広域渋谷圏における街づくりが新たなステージに移行します。

この広域渋谷圏は常に時代の最先端を走り、グローバルな意識を持つ人や企業が集まる価値創造力、発信力、多様性にあふれた街です。都市間競争が進む今、国際競争力に優れたグローバル都市を目指す上で、当社は広域渋谷圏が今持つ魅力をさらに伸ばしていくことが重要であると考えました。4つのプロジェクトの竣工・開業を契機に、広域渋谷圏において街の魅力を時代とともに成長させ、後世に継承していくために、これから物件やエリア間の連携を推進する施策に注力していきます。

そのための施策ポイントになるのは、エリアマネジメントによる地元の方々との関係構築や、街を訪れる来街者との接点を増やすデジタル基盤の構築を行った上で新しい体験や事業を創造し、世界中から共感を生む発信を行い、多様な人や企業の集積を循環させることだと考えています。

「創造」についてはここでしかできない体験価値を創出するため、体験型コンテンツの開発、新産業や最先端の技術・事業を創出するスタートアップ共創に注力します。「発信」では街のメディア性を高め、世界中から注目を集める都市のメディア化、世界中のどこにいても渋谷を体感できるデジタルツインに取り組みます。「集積」では創造と発信をドライブさせる、仲間が集まる仕組みや場をつくる、パートナーシップやアライアンスの構築を行います。

すでに取り組んでいるのは、原宿・神宮前エリアの活性化を目指し新たなカルチャートレンドを創出するためのポニーキャニオン社とのアートプロジェクトや、Plug and Play Japan社とのスタートアップコミュニティ形成、本田圭祐氏が共同創業者を務めるXPV Circle Fund をはじめとしたベンチャーキャピタルへの出資、ソニーピーシーエルと連携した動画や広告撮影用のデジタル背景アセット事業などです。当社は創造と発信において、多様な人達や他業種の企業とパートナーシップやアライアンスを構築して、一緒に取り組むことが重要と考えています。そのような人や企業が集う仕組みや場づくりを行い、広域渋谷圏に集まる多様な人や企業と共に、創造、発信をさらに加速させていきたいと考えています。

そして今般、広域渋谷圏に人を集積させる仕組みを強化するために新たなプロジェクトを立ち上げます。それが「人と、はじめよう。」をテーマにした「PROJECT LIFE LAND SHIBUYA」です。多様な人が集まる広域渋谷圏だからこそ、街づくりは人と一緒に始めた方がもっと面白い。人と始める街づくりにより、当社は「働く」「遊ぶ」「暮らす」が融合した持続性のある街を目指す広域渋谷圏において、豊かな生活の提供を目指したいと考えています。

東急プラザ原宿「ハラカド」の外観(イメージ)

それでは、広域渋谷圏で推進中の4つのプロジェクトと、人と始める取り組みを紹介します。原宿・神宮前エリアに新たに登場するのが「東急プラザ原宿『ハラカド』」です。当社はこのエリアで商業施設の代表物件である「東急プラザ表参道原宿」や、明治通り沿いに位置する「キュープラザ原宿」などの商業施設を運営。また、20年には裏路地の古民家をリノベーションした多目的イベントスペース「アンノン原宿」、衣服のアップサイクルを行う「ニューメイクラボ」を開設するなど、原宿・神宮前エリアでクリエイターらを支援し育てる場を展開してきました。

1960年代の原宿・神宮前交差点には「原宿セントラルアパート」があり、当時を代表するトップクリエイターたちが集い、自由に自分を表現しお互いに共感し、共創するクリエイターの聖地でした。当社はこの場所の歴史を踏まえ、ジャンルを超え様々なクリエイターたちが新しい文化を共創していく新たな文化発信拠点をつくり上げたいと考えています。

「ハラカド」の屋上(イメージ)。神宮交差点を挟む「ハラカド」と「オモカド」

この地に新たに誕生する商業施設が東急プラザ原宿「ハラカド」で、24年春の開業に合わせて神宮交差点はす向かいにある東急プラザ表参道原宿の施設名称を、「東急プラザ表参道『オモカド』」に改称します。ハラカド、オモカドの名称には「角と角が合わさり、人と人との出会いの交差点となり、新しい文化を生んでいく」、そんな思いが込められています。神宮前交差点を挟む2つの拠点を連携させることで神宮前交差点から新しい文化を創造、発信していきます。東急プラザ原宿ハラカドはかつての原宿セントラルアパートのように、クリエイターが集い、新しい文化を創造、発信する商業施設を目指します。

本施設では銭湯、クリエイティブラウンジ、新時代のファミレスなど、入居するクリエイターたちが個性を生かして各フロアをプロデュースします。地下1階には、近年の銭湯ブームの立役者である小杉湯の平松佑介氏と日常的に訪れたくなる原宿ど真ん中の銭湯を登場させ、3階ではアートディレクターで映画監督の千原徹也氏とクリエイターが集うクリエイターズマーケットフロアを、5階では一つ星レストランsioのオーナシェフ鳥羽周作氏と人々が集い交流する場となる、新時代のファミリーレストランを展開します。

そして本施設においては、これまでの枠組みを超えた新しい商業施設の運営の在り方に挑戦します。それが施設運営コミュニティの「ハラカド町内会」。ハラカド町内会は実際に入居するクリエイターの方々が中心になって施設運営の企画を担います。具体的には町内会メンバーが施設全体のイベントやコンテンツを企画し発信することで、共感する新たな仲間を集め、その仲間達と施設の賑わいづくりや次なるカルチャーの共創を目指すというもの。この挑戦はすでに始まっており、ハラカドの施設を共に創るクリエイターを募集。そして集まった仲間達と次なるカルチャーをつくる共創が生まれるまでの過程をプロセスエコノミーとして可視化し、ファンコミュニティの形成と拡大を目指していきます。

「ForestgateDaikanyama」の「MAIN棟」の外観(イメージ)

渋谷をはじめ恵比寿や中目黒に徒歩圏内でありながら、賑わいと落ち着きがバランスよく共存する街、代官山エリアに誕生するのが「フォレストゲート代官山」。本施設は当社の創業から間もない1955年に日本初の外国人向け高級賃貸住宅として誕生した「旧代官山東急アパート」跡地に開業します。

代官山のシンボルであった代官山東急アパートの歴史を踏まえ、フォレストゲート代官山では「食・住・遊近接の新しいライフスタイル」を提案していきます。10月に開業する本施設は建築家・隈研吾氏がデザイン設計する「MAIN棟」と、当社グループが環境保全活動している森林の間伐材を利用した木造2階建ての「TENOHA棟」からなる複合施設となります。MAIN棟では57戸の賃貸住宅に加え、3階はシェアオフィス、地下1階~地上2階は商業施設で、TENOHA棟はカフェやイベントスペースで構成され、サステナブルな生活体験を提供する活動拠点となります。

今回、MAIN棟の賃貸住宅で暮らしを広げる実験的な取り組みを行いました。新しい時代に必要な新しいライフスタイルとは何か。この問いに対し辿りついたキーワードは「心・緑・食」。そしてこのキーワードに共感いただいた3人のパートナーと共にライフスタイル提案住戸を企画します。隈研吾氏とは、心をテーマにした過ごし方の豊かさを五感で感じ、心身が整う場を目指し「半分くつろぎ・半分整う家」を企画。造園家・グリーンディレクターの齋藤太一氏とは、緑をテーマとしてウチとソトの境界線が溶け合い、自分の世界が広がっていく場「好きな植物と共に暮らす家」となる、都心でありながら暮らしの中にも緑が感じられる住戸を企画。フードエッセイストの平野紗季子氏とは食をテーマに、自分の暮らしへのこだわりと日常生活との接点を広げる場「Allday Dinnig House」を企画。食卓を暮らしの中心とし、食へのこだわりや魅力を住空間の中で実践・発信できる機能を備えた住戸を提案します。

サステナブルへの取り組みが不可欠となっている今、本施設では環境負荷を最小限に抑え、経済を持続させるサーキュラーエコノミーの実現を目指すべく、それを活動させる「CIRTY(サーティー)」を始動させました。サーキュラーエコノミー実現のためには、人や企業のリソースを掛け合わせることが必要です。そのために当社はサーティーをこの代官山の駅前で始動させ、サステナブルをテーマとしたマルシェやイベント、ワークショップなど誰もが参加できる活動を通じてサーキュラーエコノミーを身近に考えるきっかけの場を提供していきます。

渋谷の新たなランドマークとなる「Shibuya Sakura Stage」外観(イメージ)

続いて、広域渋谷商圏における新たな玄関口である渋谷桜丘エリアに誕生する「Shibuya Sakura Stage」についてです。本年11月に誕生する渋谷の新しいランドマークとなるもので、100年に一度といわれる渋谷の再開発において、渋谷駅中心地区の都市基盤整備を完成させるための重要なプロジェクトです。

本施設は「食・住・遊」を兼ね備えた大規模複合施設で、オフィス、商業に加え、渋谷駅中心地区で唯一住宅が整備されます。また、国際競争力の強化に資するサービスアパートメント、国際医療施設など多機能なハードを実装した最先端の施設となります。

街の賑わいを創出する新しい取り組みは、ライフスタイルの変化による多様な消費ニーズに応えるために、従来の賃貸借の関係を超えた新しい形のテナント共創に取り組みます。テナントとの包括的な協力関係の構築によるテナント共創として、街の賑わい創出やコミュニティ形成などの推進を目的に、共感を得られる多様なテナントと街づくり協定を締結します。そして今回、当社はカルチュア・コンビニエンス・クラブ(以下CCC)とまちづくり協定を締結。当社はCCCと共にイベントの開催および次世代アーティストの支援を通じてカルチャーを育む賑わいある街づくりに当たっていく。CCCとの協業第1弾は、渋谷桜丘エリア内にあるイベント会場SACSで次世代アーティストを応援することを目標とした「SHIBUYA ART BASE」が始動しています。

4つ目のプロジェクトは、代々木公園エリアに誕生する官民連携による「代々木公園Park-PFI」計画。本施設は「都市と公園をつなぐ」をテーマに、緑と憩いとイベントなどの賑わいが感じられる公園として25年2月に供用開始となる予定です。キーワードは「スポーツとウェルビーイング」。公園内にスケートボード利用可能なアーバンスポーツパークやランニングステーション、公園の緑の中で多様な食を楽しめるフードホールを整備し、公園に訪れる方々の心身の健康を支援します。

渋谷と原宿をつなぐファイヤー通りの中間地点に位置する本施設の開業により、渋谷の回遊性向上を図るとともに、エリア内の施設や地域との連携を含め、広域渋谷圏全体にウェルビーイングに関する取り組みを広げていく。そしてこれまで東急グループが進めてきた広域渋谷圏における街づくりは、渋谷駅前を中心に展開してきた取り組みであったのが、これらのプロジェクトの誕生により活動拠点が広域に広がり、Greater SHIBUYA2.0で目指す面的連携という新たなステージへと移行することになります。

(塚井明彦)