2024年04月29日

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昭和西川、今秋にAIを活用した枕とマットレスの提案サービス開始

今年の秋から導入する「3Dボディフィッティングシステム」。AIを活用したシステムで、客に適した枕とマットレスを提案する

昭和西川は今秋、AIを活用した寝具の提案サービスを開始する。新システム「3Dボディフィッティングシステム」は、タブレッド型端末で身長や体型タイプなど4つのアンケートに回答し、体の正面と横向きの全身写真を撮影するだけで、体に適した枕とマットレスの組み合わせがマッチ度の高い順に3パターン表示される。東京大学発のベンチャー企業であるSapeetが、自社の「AI姿勢解析技術」を寝具選びに応用できるようカスタマイズし、開発した。利用者が寝具に横たわることなく、立ったままの状態で手軽に計測できるメリットを打ち出す。テクノロジーを生かしたシステムの導入で、一人一人の体型に合った寝具の提案能力を向上させ、良質な眠りと健康へのサポートを強化する。

システム開発に携わったのは、AIソリューションの開発及びAI SaaSを展開する企業、PKSHA TechnologyのグループであるSapeet。同社は3Dによる独自の身体分析技術と可視化技術のシステムを提供する東京大学発のスタートアップ企業で、50万件以上の身体解析の実績を持ち、医療やヘルスケア業界をはじめとする事業者の販促や開発を支援する。

今回「寝具に特化したシステム」を目指し、同社が保有するAI・3D技術と独自で保有する数万体以上の体型データを掛け合わせ、さらに昭和西川の社員や店舗スタッフなど100人以上のユーザーテストを実施し、改善を重ねた。

2種類の立ち姿勢の画像を解析し、即座に寝姿勢での分析結果を表示する

新しいシステムの最大の特徴は「立ち姿勢から寝姿勢へのデータ変換」だ。立った状態の写真を何万件という膨大なデータベースと照合することで「寝姿勢であればこれぐらいの角度と重さになる」といった結果を導き出す。例のないシステムの構築に、Sapeetの担当者は「プログラミングが大変だった」と振り返り、昭和西川の担当者も「システム開発会社の担当者に寝具の専門知識を伝えながら、情報を共有するのに苦労した」という。

理想的な寝姿勢を保つことができる枕とマットレスの提案と同時に、頭の高さや腰への荷重など細かな数字も割り出される

使用にはタブレット型端末を用いて、まず簡単な4つのアンケートに回答し入力する。①性別、②身長、③体重もしくは体型、④入眠時の姿勢を仰向きと横向きから選択。次に体の正面と横向きの2種類の写真を撮影する。③で体型を選ぶと、撮影した写真から肩や腰骨など体の30の支点を割り出し、首の角度や腰回りの体積から体重を算出する。最後にAIがアンケート内容と画像解析を基にデータベースと引き合わせ、数秒と待たずに分析結果が表示。「理想的な高さでフィットする枕」と「理想的な寝姿勢を保つマットレス」の組み合わせが、パーセンテージで示されたマッチ度の高い順に3パターン提案される。

提案される3つの組み合わせは、マッチ度のパーセンテージが高い順に表示される

対象となる商品は、昭和西川のメインブランドである「MuAtsu(ムアツ)」の枕とマットレスの計11品。枕は「オーダーピロー」でソフト、ミドル、ハードと3種類の硬さから選べる。マットレスは、上質な寝心地を叶える最上位モデルの「20年ムアツ XX」、基本性能を備え体圧を分散させる「ベーシック」に加え、ハードとレギュラーの2種類の硬さを選べる弾力性に富んだハイスペックモデルの「20年ムアツ X」、スムーズな寝返りを促す「20年ムアツ」、3フォームのバランスで体を支える「スタンダード」の計8種類を揃える。

昭和西川の担当者は「3Dボディフィッティングシステムは、ただの計測システムではないところがポイント」と話す。使用するデータベースは医療業界のほか、スーツを仕立てるアパレル企業やフィットネス業界など、多種多様なビジネスの分野で共有している。「今後も色々な情報と体型データがさらに収集、蓄積されることで、AIがそれを分析し、計測の精度は高まっていく」と、期待を口にする。

同社は、こうした最新テクノロジーを生かしたシステムの導入に加え、主力ブランドの刷新、組織体制の再構築による生産力強化、既存商品のブラッシュアップなど、販促に向けた展開を加速させている。

抗菌テクノロジー「ポリジン加工」がされた「20年ムアツ」のマットレスの側地には、「防ダニ加工」をプラス。より衛生面が徹底された

MuAtsuは3月に全面リニューアルし、従来の「muatsu」、「Sleep Spa」、「ムアツプラス」の3つのラインを1つに統合した。ロゴと商品デザインも一新し、「20年ムアツ」のマットレスの側地に防ダニ加工を施してスペックをアップ。分かりやすいラインナップへの変更で客の選びやすさを叶え、高品質な商品の充実化でブランド力を一層高める狙いだ。

メンテナンスを施しながら大切に使い続けることを目的に誕生した「100年羽毛」シリーズ。独自の厳しい品質基準をクリアした商品が揃う

さらに同月、一昨年100%子会社化したアイワの社名を昭和西川羽毛製造に変更。より相互機能を活発にして生産能力の向上につなげる。同社は高級羽毛布団の製造及び独自開発した「羽毛ふとん再生加工」によるリサイクル技術で、昭和西川が展開する「100年羽毛」の製造、メンテナンスを手掛ける。100年羽毛についても、今年9月にブランドサイトを開設するに当たり、プレミアム感を打ち出したタグデザインに変えたり、顧客にID入りのギャランティカードを用意しクリーニングなどのメンテナンスを促したりと、矢継ぎ早に策を講じる。

新型コロナウイルスの流行により、質の良い睡眠への関心は高まっている。昭和西川のチャレンジングな試みは、一人一人に適した眠りを提供し、健康を支える。

(中林桂子)