2024年05月01日

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コーセー、新素材で“くずれにくい”ベースメイク

左は「エスプリーク トリプル ラスティング プライマー」、右は「メイク キープ パウダー」

コーセーは今春、化粧くずれを防止する独自素材を応用した商品を発売する。皮脂のテカりとマスクによるこすれを防ぐ2種類の機能性粉体を用いたフェイスパウダー「メイク キープ パウダー」と、こすれや汗に強く、表情の動きに柔軟性を持つ被膜材「架橋型MQレジン」を採用した化粧下地「エスプリーク トリプル ラスティング プライマー」で、価格は1320円と2860円。それぞれ3月1日と16日に発売する。新型コロナウイルス禍以前からの高機能なベースメイクへのニーズに応えつつ、マスク着脱に伴う化粧くずれの悩みを解消する。

同社は1970年代に女性の社会進出が増加したことをきっかけに、様々なシチュエーションで活用できるベースメイクの研究を続けてきた。今回実施したベースメイクに関する調査で、「表情の動きが化粧くずれの原因」と感じる人が多いことが判明。皮脂によるテカりや、乾燥によるカサつきでの化粧くずれだけでなく、「表情の動きによるヨレ」を防止する化粧下地の研究、開発を進めた。

メイク キープ パウダーに採用する新規素材は2種類。皮脂のテカり防止に優れた粉体は化学メーカーのオーケンと共同開発した。油になじみにくいテフロン加工のフライパンから着想を得て、皮脂をはじく撥油性のフッ素変性シリコーン樹脂で表面処理した粉体を開発。皮脂が化粧膜に浸透する前に、皮脂吸着体に効果的に吸着させることに成功した。

開発担当者は「マスクの中は思っている以上に高温多湿な環境」と話す。パウダーの塗布で、さらっとした状態が保てる

一方、こすれに強い粉体は化学メーカーの日油と共同開発した。肌にしっかりと密着する「肌付着性」と、こすれによる摩擦を逃す「すべり性」に着目。両方を兼ね備えた素材分子の設計に着手し、「MPC-SiMA ポリマー」の開発に成功した。マスク内の高温多湿な環境下でも皮脂を抑え、さらっとした肌状態が持続。ファンデーションのマスクへの色移りもほとんど見られなかった。

エスプリーク トリプル ラスティング プライマーに採用する架橋型MQレジンは、信越化学工業との共同開発で誕生。こすれや汗に耐える強靭さと撥水性のある樹脂素材で、高いメイクキープ力を持つ「MQレジン」にフォーカスした。MQレジンのMQ構造の間に「スペーサー」と呼ばれる柔軟な紐状の構造を設置。MQ構造の凝集を抑え、均一な皮膜の形成を実現した。MQレジンが本来持っていた機能に柔軟性が加わったことで、表情の動きにもヨレない仕上がりが持続する。

MQ構造をスペーサーでつなぐことで、表情の動きにも追従する柔軟性が生まれる

架橋型MQレジンの開発について、同社の研究所のメイク製品研究室ベースメイクグループの竹下卓志氏は「MQ構造をつないでいく際の反応のコントロールが難しかった」と語る。「丸い網目状の構造をつなぎ過ぎると化粧の油に溶解しないくらい(構造が)大きくなってしまう。また小さ過ぎても機能を発揮しない」。竹下氏は信越化学とディスカッションを重ね、時間や温度などを試して解決に導いた経緯を振り返った。

同社は今後も有能な機能性素材の開発を通して、客のニーズに応える。

(中林桂子)