2024年04月30日

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カンディハウスとソメスサドル、端材を使ったオブジェの新ブランド

その時々の端材でつくられるオブジェは、一つ一つ木や革の表情が異なる1点物

カンディハウスとソメスサドルは先ごろ、アートオブジェのブランド「COSONCO QS(コソンコクス)」を立ち上げた。両社の木製家具や皮革製品を製造する過程で出る、木と革の端材を積極的に使用し、互いの技巧を用いたアートオブジェを製作、販売する。ブランド名はアイヌ語で「遠く離れた土地のコミュニケーション」を意味する。両社が拠点を置く北海道の石狩川流域で育まれたものづくりの姿勢と加工技術を生かし、日常の傍らで豊かさを感じられる1点物の作品を揃える。アイテム数は25種類で、実店舗は持たず、ブランドオフィシャルサイトのみで販売する。

雄大な北海道の大地を流れる石狩川。両社共に自然素材を生かした製品をつくり続けている

カンディハウスは、1968年の創業以来、北海道旭川市を拠点に木製家具の製造、販売を行う。旭川は国内有数の家具の産地でもあり、天然素材である森の木を原料に国内外のデザイナーと商品開発に取り組んできた。“自然と調和したものづくり”を意識し、長く使える丈夫で美しい家具づくりを行う。

ソメスサドルは、北海道砂川市に本社を構える馬具、皮革製品のメーカー。1964年に歌志内市で「オリエント・レザー株式会社」として創業し、競馬用の鞍など馬具の製造を行ってきた。1985年に現在の社名に変更し、自社ブランドで革小物の製造販売を開始。企画から製造、販売、修理まで一貫して行う。

アートオブジェは、主要商品に使用できない材料を活用して製造する。木目や節の具合により家具の製造に適さない木材や、繊維の締まりが不十分で馬具や鞄、家具の張地には向かない革、素材取りの際に出る破片などは、製造過程で必ず発生する。こうした材料の活用を長年に亘り模索してきた両社は、デザイナーに倉本仁氏(JIN KURAMOTO STUDIO)、アートディレクターには谷内晴彦氏(desegno ltd.)を迎え、プロジェクトを始動した。

当初は一般的なインテリア小物から始まった製品企画だったが、少しだけ機能を携えたアートオブジェへとアプローチを変更した。倉本氏は「用途や機能を持たない存在ほど、そこに趣向性が生まれ、素材をより価値のあるものに変えてくれるのではないかと思ったからだ。我々はそれを『Functional Toy』という言葉で呼ぶことにし、与えられた木と革に敬意を払いながら、人々の心や空間をより豊かにするいくつかの作品をつくりあげました」(原文ママ)と語る。

「Animal Object」シリーズのキタキツネ。日常のシーンの中でそっと佇む自然の美しさを感じさせる

販売するアイテムは計25種類。オウムやホオジロなど鳥をモチーフにした「Bird Block」シリーズや、実在する名建築のバランスを取り入れ、建物を模した「Town」シリーズ、エゾリスやキタキツネなど北海道に生息する動物を表現した「Animal Object」シリーズのほか、自由に用途を決められる造形的なスティックなども揃える。価格帯は5万5000円~38万5000円となる。

良質な木と革それぞれの素材感を生かして、ビルのファサードを表現する

同ブランドは、自然の恵みを享受した良質な素材を単なるアップサイクルに留めず、製造体制を完備し、適切な価値を持つアートプロダクトを市場に提案する。