2024年04月29日

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資生堂、「イノベーションカンファレンス2022」最新知見を発表

資生堂のR&Dビジョンである「DYNAMIC HARMONY」の理念の元、「知と体験の融合」をコンセプトに、最新のイノベーションを紹介した

資生堂は20日、「資生堂イノベーションカンファレンス2022~知と体験の融合~」を渋谷ヒカリエ9階ヒカリエホールAで開催した。国際学術大会で4大会連続で最優秀賞を受賞した、たるみに抗う「高重力テクノロジー」をはじめ、コラーゲン代謝のメカニズム、サステナブルな容器の開発といった最新の研究内容を3つ発表した。

みらい開発研究所フェロ―江連智暢氏

1つ目の「ダイナミックベルト」は、みらい開発研究所の江連智暢フェローが説明。重力で皮膚が垂れ下がる「たるみ」は老けて見える大きな原因だが、そのメカニズムは十分に解明されていなかった。そこで研究チームは、皮膚の動きを捉える4次元解析技術「4D デジタルスキン」を開発し、解析を行った。

皮膚に均等な力をかけて変形させたところ、変形に抵抗する部位があることが判明。そこには、寒冷や情動などの刺激により収縮して毛を逆立たせる筋肉「立毛筋(りつもうきん)」があることがわかった。さらに、顔面の皮膚では立毛筋が高密度に存在し、それが重力方向と反対向きに配列していることを確認した。

資生堂は、一連の立毛筋群が生み出す「変形に抵抗する力の総和」が肌が重力に抵抗する仕組みであると考え、これを「ダイナミックベルト」と名付けた。この研究は、国際学術大会で4大会連続の最優秀賞受賞を記録している。

みらい開発研究所研究員堀場聡氏

2つ目は、コラーゲンの産生や分解、除去といったコラーゲンの代謝についての知見を同研究員の堀場聡氏が披露。表皮で分泌されるタンパク質「インターロイキン34(IL-34)」や「クリーピングタイム抽出液」といった成分が影響していることを明らかにした。

コラーゲンは皮膚真皮層のおよそ70%を占めるとも言われ、コラーゲンの産生の減少やコラーゲンの過剰な分解によって肌はハリや弾力を失い、シワやたるみが生じると考えられている。資生堂はこれまで、免疫細胞として知られるM1マクロファージ、M2マクロファージの2種類のバランス(M1/M2バランス)ががコラーゲン代謝に影響し、老化につながることを明らかにしてきた。

次の段階として、M1/M2バランスの崩れを引き起こす原因を研究したところ、表皮で分泌されるタンパク質「インターロイキン34(IL-34)」の減少が原因となることを発見。また、表皮細胞のIL-34産生を増やしマクロファージのM1/M2バランスを整える効果が期待できる成分として、「クリーピングタイム抽出液」を見出した。

みらい開発研究所研究員遠山麻依氏

3つ目は、サステナブルな化粧品付け替え容器を実現する技術「LiquiForm」について、同研究員の遠山麻依氏が説明した。一般的に化粧品の製造は、すでに成型された空ボトルに中身を充填する方法で行うが、LiquiFormは容器のもととなるプラスチック部材を加温して柔らかくし、そこに圧力をかけて中身を充填することで、中身の充填とボトルの成型を同時に行う。

これによって容器を製造する工場から充填する工場への空ボトルの輸送が不要になり、輸送時の破損や変形の恐れもなくなる。付け替え容器を薄い設計にできるため、プラスチックの使用量が約70%削減でき、デザインの幅も広がる。作業工程が減るため、サプライチェーン全体での二酸化炭素の排出量も約70%削減できる。

エグゼクティブオフィサー常務チーフブランドイノベーションオフィサーチーフテクノロジーオフィサー岡部義昭氏

カンファレンスには、エグゼクティブオフィサーの岡部義昭常務も登壇。資生堂は昨年に独自の研究開発理念「DYNAMIC HARMONY」を制定し、肌の内外から美しさを引き出す「Inside/Outside」、確かな効果を日本品質で届ける「Functionality/Japan Quality」、お客様の感性を科学で追究する「Science/Creativity」、プレミアム感と環境共生を両立する「Premium/Sustainability」、広くお客様を知り、1人ひとりに最適な美を提供する「Individual/Universal」の5つを柱としたが、6つ目の柱として、人と地球の新しい関係性を提案する「Human/Earth」を加えたことを説明した。

(都築いづみ)