2022年05月19日

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【連載】富裕層ビジネスの世界 「顧問」という働き方(2)働き方や待遇

名誉職から性質を変え、稼げる新たな職業となった「顧問」。今や顧問市場まで誕生し、拡大は必至だ。そこで今回は、顧問の働き方や待遇について見ていくことにする。

派遣タイプが主流に

「現役時代が忙しかっただけに、退職後、あまりに暇すぎて……。そんなときに紹介されたのが顧問派遣会社だった」

ある上場企業で部長を務め、退職後、約20社の顧問を務めている男性は、顧問になったきっかけをこのように語る。現役時代、家庭さえ顧みずにひたすら仕事に打ち込んでいただけに、退職後の退屈な生活にへきえきしていた男性。そんなときに巡り会ったのが、顧問派遣会社だった。

顧問という職業にピンときていなかったというが、とにかく暇をもてあましていたこともあって、とりあえず顧問派遣会社に登録してみた。派遣会社からは、これまでのキャリアや人脈などを事細かにヒアリングされ、複数の顧問先を紹介されたという。正直言って顧問という選択肢は考えていなかったため、右も左もわからない。そこでとりあえず、長年在籍した企業と同じ業界の企業と契約した。

前回お伝えしたように、今や複数の企業と契約するプロフェッショナル顧問が台頭し、1つの市場を形成している。その拡大を支えているのが顧問派遣会社だ。顧問派遣も人材派遣業の1つであり、基本的な仕組みは同じ。希望者が人材派遣会社に登録後、派遣を希望する企業との面談などを交え、ニーズがマッチングしたらその企業に派遣されるというもの。契約形態は「業務委託契約」が基本だ。

こうした顧問派遣サービスを展開しているのは、マイナビやパソナといった大手派遣会社。それ以外にもエスプールやサーキュレーション、レイスといった新興系もずらり。なかには、サイエストのように海外進出の顧問をメインとする会社まである。こうした顧問派遣サービスに登録している人材はざっと11万人に上り、各社140〜180%成長という盛況ぶりだ。

では、そうした派遣会社に登録した後、どのような働き方をしているのだろうか。顧問の実態を見ていこう。

報酬は月1、2回訪問で10万〜15万円

冒頭で紹介した男性の場合、大手の派遣会社に登録。最初に契約した先は月に1〜2回、2時間程度の出社で月10万円で契約したという。当初は社長の相手が中心で、お茶を飲みながら世間話をしたり、相談に乗ったりしていた。

そんなある日のこと、社長から「とにかく困っているが、うちには人材がいない。是非、うちの社員と一緒に経営課題を解決してもらえないか」との依頼を受ける。そこで男性は、社内にプロジェクトチームを設置、自らそのメンバーとなって改善計画の策定に携わった。

当初、事情を知らない社員たちからは「あの人は、社長とお茶を飲んでいるだけで給料をもらえるなんて」と批判されていたというが、課題解決をいくつか進めていく過程で信頼されるようになり、今では社員から直接相談されることも少なくない。

現在、男性はこうした企業を20社抱えているため、1日に1〜2社程度訪問、多い日には1日中出ずっぱりの時もあるという。そのほとんどが事業や課題解決のアドバイスだといい、訪問前の予習も必須だ。「会社員時代よりもよほど働いている」と男性は笑う。

報酬は、会社によってばらつきがあるものの、平均すると1社当たり月に10〜15万円が相場。大企業であれば50万円のところもあるというが、10万円だとしても月に200万円、年収に換算すれば2400万円になる。この男性の場合、実績を残していることで報酬もアップしているといい、「自由に働ける上に、会社員時代からすれば2倍以上の給料をもらっており、十分満足している」と語る。

ただ、顧問といってもそこは人材派遣。そのため会社が支払う料金の一部を派遣会社が持っていく。「以前は8:2や7:3の割合で、ほとんどを派遣会社が持っていっていた。しかし、顧問の地位が向上するにつれ、6:4や5:5といった好待遇のところも出始めている」と人材派遣会社の幹部は明かす。

この幹部曰く「新規参入しているところは、派遣する顧問を集める必要があるので高条件を提示している様子。逆に古くからいる事業者はいまだに8:2とかでやっているので、顧問派遣に登録する際にはしっかりと確認することが重要だ」

営業先紹介以外の仕事も増加

顧問の業務内容も時間の経過と共に変わり始めている。

「始めの頃は、ほとんどが営業先を紹介してくれというものばかりだった。しかし、紹介した先に何度か商品を売って、『はい終わり。次を紹介してくれ』と言われ、なんだか営業先の“使い捨て”をされているようで嫌になってしまった」

ある顧問はこのように語り、「それまで血がにじむような苦労を重ねて培ってきた営業先を、そんなに簡単には紹介したくない」と明かす。

確かにこれまで顧問の仕事といえば、こうした営業先紹介がほとんどだった。特に小さなベンチャー企業や中小企業にとって販路の拡大は至上課題で、それを求めて顧問を雇うという傾向が強かった。

だがここ数年は、「それまでのキャリアで培ってきた専門知識やノウハウなどに基づいたアドバイスを始め、課題解決の手助けをしてもらおうという企業が増えてきた」とこの顧問は語る。「プロジェクトなどに参加して一緒に働いている私の姿を見て、営業先の紹介だけではもったいない、もっと活用しようという雰囲気が醸成されてきた。私もそうした仕事であれば楽しいし、一生懸命になる。顧問、企業の双方にとってウィン・ウィンの関係になってきている」と男性は喜ぶ。

2回に渡って、顧問という仕事の実態と変化について取り上げてきた。そこで次回は、どういった人が顧問に向いているのか、そして企業向けに上手な顧問の活用方法についてお伝えする。

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