2024年10月10日

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デジタル販促の巧技 小田急百貨店 ECサイト刷新 催事との連動、コト強化

 

 3月の売上げ3倍、4月も2倍

 

小田急百貨店が3月10日にリニューアルオープンしたインターネット通販サイトが上々の滑り出しだ。3月の売上げは前年の約3倍、4月は13日時点で約2倍と大きく伸長した。食料品やギフトを中心とする品揃えの幅を広げるとともに、購入した商品を店舗で受け取れるようにする、スマートフォンでの操作を改善する、いわゆる「キャリア決済」を導入する、セキュリティを強化するなど、客の利便性も改善。ネット通販の売上げは2017年度(17年3月~18年2月)から19年度の3年間で約1.4倍に膨らむなど好調で、約6年半ぶりの新装で勢いに弾みが付いた。

 

ネット通販サイト「小田急百貨店オンラインショッピング」は、1999年に立ち上げた「小田急ネットショッピング」がルーツだ。中元や歳暮のギフトを核に売上げを伸ばすと、2013年10月4日にはサイトを刷新。食品とギフトに特化し、独自性を強めた。16年11月11日には、百貨店に優位性があり、客からの要望も多い化粧品を追加。百貨店業界で初めて、購入した化粧品を駅のコインロッカーで受け取れるようにもした。品揃えを総合的に拡充する同業他社が多い中、ギフト、食料品、化粧品に絞り込む戦略は奏功。ささげ業務や配送などの人的負荷に課題は残るものの、業績は右肩上がりを維持してきた。

 

品揃えを特化した結果、販売の効率も向上。文字通り順風満帆だったが、中元や歳暮のギフトはダウントレンドで、バレンタインデー、母の日、父の日といった”モチベーション”は同業他社と競合が激しい。品揃えがギフトやモチベーションに偏ると、購入頻度が上がりづらい。事実、小田急オンラインショッピングには1年間に2回しか購入しない客が多い。先細りを避けるため、「オリジナルのコンテンツや限定品の開発、店舗が開く催事との連動などで、品揃えを充実させる必要がある」(樋口光太郎事業創造部eビジネス担当統括マネジャー)と判断した。

 

とりわけ、店舗が開く催事との連動に力を入れる。すでに”種”は蒔いており、例えば新宿店が昨年8月28日~9月2日に開いた「小田急うまいものめぐり」に合わせ、早期の売り切れや行列が予想される商品を、8月14日から小田急オンラインショッピングで先行予約販売。同10月16日~20日に実施した「食べあるキング厳選!秋の食欲全開まつり」では、イートインを構えた「後楽寿司 やす秀」の座席の予約を、10月15日から同様に受け付けた。ネット通販の利用者に特別感を提供するだけでなく、店舗の客足も増やせる”一挙両得”だ。やす秀の予約は、僅か2日で埋まったという。19年度は4回ほど店舗の催事とネット通販を連動させたが、20年度は増やしていく。

 

オリジナルのコンテンツでは、女子プロボウラーとの協業が大輪の花を咲かせつつある。店舗ではイベントを開き、ネット通販ではボウリングシャツ、ポロシャツ、マフラータオルなどを限定で販売。SNSで火が点き、売上げは回を重ねるごとに伸び、19年度は17年度の2倍にのぼった。樋口氏は「百貨店の特長を生かしつつ、客層を広げられる」と手応えを掴む。

 

品揃えでは、子供関連やリビング雑貨も強化。今後は、紳士の雑貨やスーツでオーダーメイドを手掛ける。樋口氏は「他社との差異化を考えた時に、モノの販売からコンテンツ、物語の販売へと切り替えていく。その象徴がオーダーメイド。需要が旺盛な『コト消費』にも繋がる。オーダーメイドは、色を変えるとイラストも変わるようにするなど工夫を凝らしながら、価格でなく良いモノを求める男性に訴求していく」と腹案を明かす。

 

品揃えの比率は、食料品で8割を想定。百貨店の支持が厚い食料品を柱に、化粧品や雑貨、福袋などで嵩上げする。食料品では、水や米などを定期的に届けるサービスも視野に入れる。

 

新型コロナウイルスの蔓延で、百貨店業界は臨時休業や一部の売場での営業を余儀なくされている。小田急百貨店オンラインショッピングも先行きが不透明なまま新たなスタートを切ったが、売上げは良い意味で想定外だ。3月の売上げは前年の約3倍、4月は13日時点で約2倍。3月は化粧品が前年の約4倍と牽引し、食料品も「バイヤーの一押しセレクト」をはじめ、活況を呈した。バイヤーの一押しセレクトは、2週間単位で更新する。

今後は、外部のインターネットショッピングモールへの出店を検討中だ。小田急百貨店は、ネット通販で果敢に攻める。