2021年11月28日

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【連載】富裕層ビジネスの世界 新型コロナで激変する富裕層の資産運用

Photo by André François McKenzie on Unsplash

仮想通貨に資産を逃避させる富裕層

「ここ最近、ビットコインを始めとする仮想通貨(暗号資産)が、以前のような“キワモノ”ではなく、ポートフォリオを構成する1つの資産になってきた」

富裕層の資産運用をアドバイスしている複数のプライベートバンカーたちは口を揃えてこう語る。彼ら曰く、「投機商品」から「投資商品」へと移行し、長期投資に転換し始めているというのだ。

きっかけは、新型コロナだ。「新型コロナ対策で各国政府が財政出動を積極化させており、法定通貨に対する信用が揺らぎ始めているから」というのだ。「有事の金」と同じく、仮想通貨が安全資産と位置付けられ、資産を逃避させているのだ。確かに仮想通貨は2020年初旬から上がり始めている。ビットコインで見れば、17年から18年にかけてバブルが崩壊し急落した後、しばらく低調だったが、コロナ禍が深刻化し始めた20年初旬から多少の上げ下げはあるものの上昇基調は続き、21年に入って3万6000円を突破した。

「投資銀行が相次いでリポートを発表するなど、機関投資家も仮想通貨へ走っている。その様子を見た富裕層も『機関投資家が投資するなら大丈夫だろう』と考え、投資しているようだ」(プライベートバンカー)

もちろん、全てを仮想通貨に振り向けているわけではなく数%程度ではあるが、それでも富裕層が保有する資産は大きく、市場に与える影響は少なくない。

 

リスク許容度を高めハイリターン投資へ

このようにコロナ禍で、富裕層は運用姿勢を大きく変化させている。ある企業の創業メンバーで、上場後、自社株も含めて数十億円規模の資産を保有する男性は、「それまでは長期・分散投資一辺倒だったが、コロナをきっかけに短期運用に切り替えた」と明かす。

この男性は、それまで「年2〜3%程度の利回りがあれば生活するのに十分」として、少しだけ株と不動産に振り向ける他は、米国債を始めとする債券を中心に運用してきた。ところが新型コロナをきっかけに「考え方が大きく変わった」と語る。

「新型コロナは、将来、何が起きるのかわからないということを教えてくれた。であれば、稼げる内に稼いで、資産を殖やしておいた方がいいと考えるようになったからだ」とその理由を語る。とはいえ、株は折からの新型コロナ対策で既に高値をつけており、そこまで大きなリターンが得られない。そこで男性は「多少リスクが高くなってもハイリターンが得られる金融資産に投資しよう」と考え、様々な金融商品に短期投資するようになったという。

「コロナ禍で資金を寝かしておくのは逆にリスクだと思うようになった。そのため最近は、リスクの許容度を引き上げて、短期運用でハイリターンが得られるものに積極投資している」と明かす。この男性曰く「私などはまだかわいい方。何だかんだ言っても外国企業の社債やETFくらいがせいぜいだから。すごい人はもっとリスクを取っている」と男性は笑う。

 

海外の開発案件に投資

では、どういうものに投資しているのだろうか。40代後半のIT系企業を経営している男性が、最近投資しているのは「ランドバンキング」だ。

ランドバンキングとは、不動産投資会社が将来的に開発需要が見込まれる未開発の土地を購入し、個別に境界線が引かれていない共同持分という形で、投資家に公募を行う投資プロジェクトのこと。不動産投資会社は、購入した土地に対する開発プランニングを行って不動産開発デベロッパーに土地を売却。その後、売却によって得た利益を投資家に償還する。開発前の土地が市場価格よりも安価に購入できるため、売却できれば非常に高いリターンが期待できるが、できなければ投資リターンが得られないなど、リスクはかなり高い。

この男性は「情報が正しいかどうかの目利き力が求められるが、数千万円の土地が数億円になるなど、高いリターンを得ている。現地の内覧会には、上場企業の社長や中小企業経営者、中には官公庁に勤める役人の姿もあった」と明かす。「勉強の意味も込めて、ハイリスク・ハイリターンのものに投資している」と言うが、最も高いリターンを得ているのが「上場前の企業に投資する未上場株投資だ」とも。

 

究極のハイリスク・ハイリターン投資

「自分自身が、先輩に投資してもらったおかげで会社を成長させることができたし、大きなリターンを出して報いることも経験した。そのメリットの大きさも熟知している。確かに全ての出資先企業が成功するわけではないのでリスクは高いが、後輩たちを応援する意味も込めて積極的に投資している」

男性がこのように語る未上場株投資は、「究極のハイリスク・ハイリターン投資」とも言われる。10社に投資して1社でも成功すればいい方で、投資先が経営破綻などしてしまえば投資した資金は戻ってこない。一方で、投資した未上場企業が上場したり、企業に買収されたりすれば、たちまち投資額の10倍以上のリターンを得られるからだ。

しかも最近は追い風が吹く。20年は新型コロナで出足が遅かったものの12月には27社が相次いで上場。07年以来、久しぶりに年間の上場企業数が100社を超えている。

「成功する会社かどうか、見極めることができるかどうかが全て。だが判断するための材料は、限られたメンバーだけで構成されるインナーサークルでしか手に入れることはできない。そういう意味で誰でもできる投資ではないが、今後も上場する企業は増えそうで、コロナ禍の今こそ積極的に投資していきたい」

このように、富裕層はコロナ禍の今、チャンスとばかりに投資を積極化させている。法定通貨の信用力が下がりつつある中で、今後もハイリスク・ハイリターン投資は熱を帯びていきそうだ。