2026年10月23日

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「白だし」市場はなぜ好調なのか 生活者とメーカーの視点から探る

食空間コーディネーターの福島雅代さん(左)とにんべんで商品開発全般を手掛ける外山浩二執行役員部長(右)

だしに薄口しょう油、砂糖、みりんなどを加えた液体調味料「白だし」が注目されている。市場規模は100億円を突破したといわれており、かつお節とだしの専門店・にんべんでも、売上げは伸びている。なぜ消費が増えているのか、白だしならではの利点とは何か。にんべんの執行役員商品サービス企画部長外山浩二氏と、食空間コーディネーターの福島雅代さんに語っていただいた。


白だしは「万能調味料」、レシピの発信が利用の増加に

――最初に、自己紹介をお願いします。

福島 私は「食空間コーディネーター」として、テーブルコーディネートにとどまらない食と空間の演出を手掛けています。和・洋・中の食のマナーの認定講師資格を持ち、フードコーディネーターや、調理師学校の講師としても活動しています。

外山 私は、商品の企画・開発を担当する「商品サービス企画部」の部長で、当社の商品全般を見ています。その前は20年以上営業部にいたので、お客様やお取引様など、現場の感覚も持ち合わせているのが強みです。

色が薄いため、素材の色を生かせるのも「白だし」ならではのメリットだ

――お2人にとって、「白だし」とはどのような存在でしょうか。魅力などを教えてください。

外山 一言で言うと「万能調味料」、和食だけでなく様々な料理に使えることがメリットだと思います。「めんつゆ」なども便利ですが、それよりも汎用性が高いかもしれません。色が付いていないので、素材の色を生かせるのもメリットですね。 料理は見た目も大切ですから。

福島 私は「だし」が元々好きで、お茶を飲むような感覚で気軽にだしを飲んでいます。西洋料理ではブイヨンのスープが近い存在ですが、洋の東西を問わず、だしは食の基本で元気をもらえる存在なのだと思います。

白だしと出会ったことで、ずっと憧れていた味を再現することができました。以前甘味処でお雑煮を食べた時、家庭で作るお雑煮とは違う、だしの効いた味に衝撃を受けたんです。白だしを使えば家でも作れることが分かった時は、うれしさと驚きがありました。

白だし市場は拡大している(にんべんより提供)

――普段はどのような用途で使われますか。

福島 卵と混ぜれば簡単にできるので、茶碗蒸しをよくつくります。うどんなど、温かい麺類に使っています。麺つゆを使った濃い色のつゆよりも、だしの効いた薄いつゆの方が何となく高級感があり、具材も映えます。煮物などでも、具材を綺麗に面取りした料亭風のものにするときは重宝しています。

和食以外では、ブイヤベースやパスタ、シチューなどの洋食にも使います。ベースのだしが少し物足りない時にプラスすると、コクが入って味が決まります。まさに「万能調味料」ですし、家庭の救世主だと思います。

外山 私もうどんによく使いますね。白だしは様々な活用方法がありますし、最近はメーカー各社がレシピを紹介しています。それによって市場が拡大していると考えられますし、自分も1人のユーザーとして実感しています。

添加物を極力使わない製法で、オーガニック志向の生活者から支持

――にんべんの白だし商品について教えてください。

外山 全部で4種類あります。どの商品もだしの組み合わせは共通で、かつお節、さば節、そうだがつお節、昆布でうま味の相乗効果を出しています。量販店で販売している、一番廉価な「白だし」は、お求めやすい価格を実現するために、うま味成分の「調味料アミノ酸」を使っています。

白だし、ゴールド、塩分控えめ、特撰の4種類を揃える

少し上の価格になる「白だしゴールド」は、先ほどの「白だし」に比べて1.5倍のだし素材を使い、調味料アミノ酸を使用していません。これが一番人気商品です。しょう油はやさしい味わいの有機しょう油を採用していて、だしを引き立てます。

そのほか、塩分を3割カットした「塩分ひかえめ白だしゴールド」、百貨店などで売っている「白だし特撰」があります。白だし特撰はかつお節に最上位の「本枯鰹節」を、しょう油に有機丸大豆を使った白しょう油を採用しています。

――売れ行きはいかがでしょうか。

外山 「白だしゴールド 500ml」の販売数量が、2022年度(22年3月~23年2月)から25年度に掛けて、約2倍に増えました。理由としては、当社では添加物を極力使わず、だしのうま味を最大限生かしていることがあります。家庭でだしを取るのと同じように、昆布は水に浸けてから火にかけ、沸騰する前に取り出します。かつお節は沸騰したお湯でさっとだしを取ります。この製法はかなり手間もコストもかかりますが、その分、豊かなだしの風味を引き出すことができます。

客層としては、お子様が巣立った50~60代以上と、第一子が生まれたくらいの30代という、2つの層が大きいです。幼少期に親しんだだしの味は、一生それをおいしいと感じると言われているので、食育の点でも良いようですね。

福島 私は4歳の孫がいますが、この前白だしを使った茶碗蒸しをあげたら「これはおいしいね」と言っていました。娘夫婦にはよく料理を届けていますが、調味料にこだわっていますし、娘夫婦も食事に気を使っています。きっとその効果だったんでしょうね。

本物のかつお節と昆布を使ってだしを取る、専門店のこだわりが強み

かつお節や昆布から取っただしを使うメーカーは少ないという

――にんべんの白だしはやや割高な価格ですが、それでも選ぶ理由は何でしょうか。

福島 うちのようなシニアの2人暮らしだと、一食一食を大切にしたいという気持ちが強いです。人の体は食べるもので構成されますし、調味料にもこだわりたいと思います。良い食事があれば食器も良いものを使ったり、箸使いも丁寧になったりしますし、生活がより豊かになるのではないでしょうか。

先ほどの商品の話で、とても素材にこだわっていることを知ったので、なおさらそう思います。もっと早く知りたかったくらいです(笑)。

外山 我々のアピールが足りていなかったようですね(笑)。今市場に出ている白だしは、しょう油蔵をルーツとするメーカーの商品と、当社のようにかつお節屋から始まったメーカーの商品とで、味の傾向がかなり異なります。当社はかつお節だしを丁寧に取り、商品に落とし込んでいますが、そうすると温めた時の香りがとても良いんです。

確かに価格は少し高いですが、一度手に取って使っていただければ、かなりの確率でリピーター、ファンになっていただけます。ネット通販のレビューなどを見ても、そうしたコメントが多く見られます。

――さらなる売上げ拡大に向けて、取り組んでいることはありますか。

外山 商品開発の面では、品質の向上、塩分控えめ系の開発、大容量化などを行っています。中でも直近では大容量ニーズが高まっていることから、この春「塩分ひかえめ白だしゴールド」を500mlに容量変更。さらに今秋には、1Lサイズの「白だしゴールド」を投入しました。キャンペーンやプロモーションも絡めて、売上げや認知度を伸ばしていきたいです。

簡単に「だし」を感じられる白だしで、食事、家庭、生活がより豊かに

お互いに新たな発見や気付きがあり、和やかな対談となった

――ここまでユーザー目線、開発者目線で意見を交わされましたが、振り返ってみていかがでしょうか。

福島 商品に対する理解が深まりましたし、かつお節と昆布からだしを取っているという話から、ものづくりに対する老舗の矜持のようなものを感じられました。現代は皆さん忙しいので、かつお節を削ってだしを取るのは難しいと思いますが、それでも白だしを使えば手軽に本物の「だし」を味わえます。

私は母にもよく料理を振る舞っていますが、白だしを使った料理を食べ、そのおいしさを感じてもらい、「これおいしいね」「レシピ教えて」「あなた料理上手だね」といった会話が生まれることが幸せにつながるのかなと思います。

やはり消費者と作り手側は、「人対人」ではないですが、敬意がとても大切だと思います。 にんべんさんは日本橋という場所で長い歴史もありますし、それら一つ一つが積み重なって”信用”が生まれていると思います。今日は本当に、商品に対して敬意を感じることができました。

外山 実際に商品を使っている方の生の声を直接聞けたことがうれしかったです。と同時に、まだまだ伝えきれていないことが多いことが分かりましたので、さらに発信していきたいです。特に「かつお節からだしを取っている」ことは、もっと前面に出していいのかもしれませんね。

また、かつお節を削ってだしを取る工程は手間ですが、白だしを使うことで簡単にだしを取り入れられます。白だしによって皆様のご家庭が少しでもより豊かになればと思いますし、そうした商品を企画・開発していきたいとあらためて感じました。

(聞き手・都築いづみ)