丸広百貨店、東北3百貨店と連携を強化
初日はシルバーウィークの最終日でもあり、開店直後から大勢で賑わった「みちのくご当地フェア」
丸広百貨店、うすい百貨店、川徳、藤崎が、社員の育成や交流、販売促進策のノウハウの共有などで連携を強めている。4社は昨年から、福島県や岩手県、宮城県で人気の食品や工芸品などを揃える「みちのくご当地フェア」を丸広百貨店川越店で開いているが、今年は事前に4社の販売促進担当がうすい百貨店に集まって情報交換したり、東北3社が丸広川越店に若手社員と販売促進担当を派遣したり、より交流を活発化。接客や販売促進策の手法などを相互に学び、社員の成長やモチベーションアップを促す。全日本デパートメントストアーズ開発機構(ADO)やハイランドグループが役目を終えて以降、特に地方百貨店の社員は他社から学ぶ、刺激を受ける機会が少ない。4社はフェアを通じて地元のモノをアピールする、観光客誘致につなげるだけでなく、人財育成にも役立てる方針だ。
協業は惰性化すると、新たな何かが生まれなくなる。4社でのみちのくご当地フェアは今年で2回目だが、丸広百貨店と藤崎のご当地フェアは5回目を数える。マンネリに陥らないよう、4社の首脳が藤崎に集まって協議。丸広百貨店の大野寛和営業企画部長によれば「(実務に携わる)メンバーを一新した上で、毎回新しい何かを1つ加えながら、大きく発展させていこうと決めた」という。
その新しく加えた1つが、販売促進担当の交流と「インスタグラム」を用いた生配信だ。うすい百貨店に4社の販売促進担当が集い、仕事のノウハウや悩みなどを共有。困った時に助け合える関係性を構築した。4社の商圏が重なっていないからこそ、可能だ。生配信は、みちのくご当地フェアの初日に当たる23日の夜に実施。4社の社員と、インフルエンサーで埼玉県広報アンバサダーの「食べて埼玉」が出演し、それぞれの地域の魅力や推奨品を紹介した。生配信に限らず、4社の各アカウントでも情報を発信しており、協力してフェアと各社の認知度を高める。
フェアは、若手社員の成長を後押しする場でもある。品揃えから陳列、接客まで他社から学べる機会は少ない。藤崎の千葉伸也マーケティング統括部兼コンテンツデザイン担当長は「若い社員は経験を欲している」と強調する。丸広百貨店の有田圭一取締役百貨店統括部長兼本店長は「(他社の社員の接客を見て)6年目くらいかと思ったら、3年目だった。驚くとともに、当社の人財育成について考えさせられた」と率直に語る。売上げ以外にもメリットは多い。
もちろん、大前提はフェアの成功だ。一定以上の収益を確保できなければ、継続は難しい。今回も各社は過去の売れ筋を踏まえて品揃えを厳選した。その象徴が、話題の「シーラカンスモナカ」の“ルーツ”といえる榮泉堂の「バター最中」(初出品、宮城県)であり、川徳が創業160周年記念として今年4月に発売したオリジナルの「ガレットクリームサンド」であり、会津長門屋の「羊羹ファンタジア」(初出品、福島県)だ。初日はバター最中が早々に売り切れ、羊羹ファンタジアも「目当てに開店直後に来てくれた方がいる」(うすい百貨店の菅野俊広営業推進部長)。

川徳が創業160周年を記念して発売した「ガレットクリームサンド」。今年4月の「生誕祭」では完売したという
回数を重ねるとリピーターが増える反面、飽きも生じやすい。各社は初出品を用意するほか、藤崎は「全体の約4割を新規で構成」(千葉氏)し、川徳は「『そば素麵』など独自商品のボリュームを増やし、他では買えないモノを中心に揃えた」(金子圭介セールスディレクター)。菓匠三全(宮城県)や三万石(福島県)、さいとう製菓(岩手県)など定番は押さえつつ、工夫を凝らす。
フェアは「自分達の商品が他県でどう売れるか。それをフィードバックできる」(大野氏)という役割も果たす。地域商社を担う地方百貨店にとって“地産外消”のヒントを得られる場だ。各県の食品や工芸品に触れた客の旅行需要を喚起する狙いもある。一方で、各百貨店にとって他県の出展者との交流も魅力だ。菅野氏は「商談にもつながる。メリットをすごく感じる」と喜ぶ。
ご当地フェアは相互出店が原則だ。丸広百貨店は今年2月16~25日、水戸京成百貨店や東武宇都宮百貨店と藤崎で「ご当地デパート うまいもの自慢」を開いたが、その第2弾を予定する。東北の百貨店だけでなく、天満屋や遠鉄百貨店、福屋らともフェアを行ってきた。今後も継続し、地方百貨店の共存共栄に寄与する方針だ。
(野間智朗)