2026年10月02日

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高島屋、冷凍食品市場に参入 独自惣菜で共働き世帯に照準

まずは5種類の中華惣菜を販売する(売場は高島屋日本橋店)

高島屋はグループで外食事業を手掛けるアール・ティー・コーポレーションと協業し、独自の冷凍惣菜ブランド「百味彩菜(ひゃくみさいさい)」を立ち上げ、9月2日に販売を開始した。「手軽なのに本格的な味」や「毎日食べても飽きないおいしさ」を追求し、まず5種類の中華惣菜を用意。10月7日には6種類の洋惣菜を、来年2月頃には5種類の和惣菜を加える。価格帯は1000円前後で、高島屋の各店(フードメゾンおおたかの森店、岡山高島屋、JU米子高島屋、いよてつ高島屋、ジェイアール名古屋タカシマヤを除く)の自主編集売場「味百選」、食品の宅配サービス「ローズキッチン」で扱う。共働き世帯の増加などを背景に、冷凍食品市場は拡大を続けており、その旺盛な需要を取り込む。

百味彩菜の開発は約1年前にさかのぼる。高島屋の食品は特にギフトや「ハレの日」が支持されているが、「日常にも寄り添っていきたい」(田中辰也MD本部食料品部食料品宅配グループマーチャンダイザー)と考え、いわゆる「三温度帯」から冷凍に照準を合わせた。

常温や冷蔵でなく冷凍を選んだ理由を、田中氏は「『いつでも』や『店舗を訪れずに』を重視した。冷凍であれば、より素材やグループ力を生かせる。近年の冷凍食品市場の成長を踏まえ、味百選で冷凍食品のスペースを広げていたのも良いタイミングだった」と説明する。

冷凍食品の定着も後押しした。一般社団法人日本冷凍食品協会の調査によれば、2025年の国内冷凍食品消費量は初めて300万tを突破。右肩上がりの状態だ。田中氏は「自分も含めて共働き世帯は日常的に冷凍食品を使う。買い物のタイミングが限られるため、冷凍食品で補完する。しかも、物価の高騰で食材の購入から下ごしらえ、調理までのコストがかさんできている。冷凍食品を使うと、コストパフォーマンスやタイムパフォーマンスが良くなる」とメリットを強調する。

ただ、成長市場は競合も激しい。百貨店業界には、大丸松坂屋百貨店が高級冷凍食品のサブスクリプション「ラクリッチ」を2年余りで終了した例もある。スーパーマーケットでは価格競争が熾烈だ。田中氏は「すみ分けが必須。飽きない本格的な味、百貨店クオリティの商品で差異化する」と強調し、価格競争とは一線を画す。

商品開発では、アール・ティー・コーポレーションが「鼎泰豊(ディンタイフォン)」や「糖朝(トウチョウ)」「FAUCHON(フォション)」「LINA STORES(リナストアズ)」の運営で培ってきたノウハウを活用。コスパやタイパを重視する人々の購買意欲を喚起するため、食材や調味料の購入、下ごしらえ、調理に手間暇がかかる料理を選んだ。メインと“もう1品”の両方を担える料理も意識しており、幅広い需要を取り込む。

実際、9月2日に発売した「黒酢酢豚」「八宝菜」「海老のチリソース」「茄子と木耳の辛みそ炒め」「麻婆茄子」(各981円)は、いずれも気軽に作れる料理ではなく、メインでも副菜でも取り入れやすい。

中華惣菜に続き、10月7日には洋惣菜を投入する。「国産ハンバーグ」(和風ソース、デミグラスソース、トマトソース、各1080円)と「グラタン」(エビ、チキン、ミート、各981円)で、ハンバーグには鼎泰豊で小籠包(しょうろんぽう)に用いるひき肉の、そのソースにはリナストアズのトマトソースの知見を生かした。まさに高島屋グループならではの商品だ。共通の食材や調味料が多ければ、事業の継続に必要な採算性も高められる。調理もアール・ティー・コーポレーションが有するセントラルキッチンに集約。百味彩菜はセントラルキッチンの稼働率の改善にもつながるという。

もちろん、味にもこだわった。味覚は千差万別だからこそ、「全方位でなく味百選の客層をベースに『本格的』を追求した。ターゲットを広げ過ぎると、(味などが)ぼやける」(田中氏)。試食は5回を数え、高島屋の役員も参加。修正を繰り返して完成させた。国産ハンバーグは肉のひき方をミリ単位で調整したという。

電子レンジでの解凍から逆算して味を組み立てたのもポイントだ。具体的な方法は非公開だが、電子レンジで解凍した時においしく仕上がるよう工夫した。冷凍食品は電子レンジの性能によって熱の通り方が変わってしまうが、田中氏は「ある程度、万能な数値(時間)を出せた」と自負する。

来年2月を目途に和惣菜も登場する。「半年間を1つの区切りとしてラインナップを改廃しながら、和洋中で各5~6種類を安定的に届けたい」と田中氏。安易に品数を増やさず、客の反応を見極めて販売していく。販路もグループの店舗とローズキッチンで足元を固めてから、外部への卸売などを検討する。

9月17日時点での売れ行きは順調だ。中でも新宿店や大阪店、玉川店が好スタートを切った。柏店も問い合わせが多い。外商顧客からは「リーフレットなどはないのか」という声が届いており、対応を急ぐ。今後は情報発信も強化し、認知度を高める。

店舗では自主編集売場で取り扱っており、拡販には販売員の協力も欠かせない。「全ての販売員が試食しており、『自分達の商品』と思ってほしい。9月末には全店舗を巡って販売員からヒアリングし、それを運営に生かしていく。いずれは高島屋の全店舗で売りたい」と田中氏は意気込む。

百貨店業界では松屋が22年8月に始めた「ギンザフローズングルメ」が好調で、明治屋を通じた卸売も伸びている。売上げは2025年度(25年3月~26年2月)で1億円に上り、取り扱い店舗は15を数える。将来的には30店舗での販売を目指すという。高島屋が後に続くか、“百貨店ならではの冷凍食品”に注がれる視線は熱い。中長期的な継続に必要な収益性の確保には、高島屋グループ以外にも販売網を広げられるかがカギを握りそうだ。

(野間智朗)