<ストレポ12月号掲載>百貨店中期計画の進捗度
(画像はイメージ)
上場百貨店の2025年度上期業績は、減収減益トレンドだ。主力の百貨店事業が想定以上の好業績を遂げた、24年度の反動減を強いられているためだ。厳しい業績とはいえ、想定内でもある。インバウンドは夏以降、回復基調に転じ、何より国内顧客の売上高は富裕層など外商顧客を中心に上期も堅調な実績で推移した。それは各社の中長期経営計画の重点施策が奏功したからでもあろう。25年度は、これまで仕掛けてきた持続的成長への「攻め」の戦略に拍車がかかっている。
※この記事は、月刊ストアーズレポート2025年12月号掲載の特集「百貨店 中期計画の進捗度」(全23ページ)の一部を抜粋・編集して紹介します。購読される方は、こちらからご注文ください。(その他12月号の内容はこちらからご確認いただけます)
25年度連結業績 上期実績と通期予想
主要都市に基幹店を構える上場百貨店の25年度第2四半期(上期)連結業績は、前期にけん引した主力の百貨店事業に過去最高水準の反動減が色濃く表れ、減収減益を強いられた。インバウンド(免税売上高)が激減したものの、想定内の減収幅であり、国内顧客の実績は外商を中心に概ね堅調だ。下期の百貨店事業はインバウンド回復と国内顧客の堅調な業績による増収増益を見込む。
通期連結予想は、上期の影響を踏まえ、微増収減益もしくは減収減益を想定している。総額売上高並びに各利益段階で過去最高が相次いだ24年度とは環境が一変したとはいえ、各社の中期経営計画の進捗が奏功し、想定内の減益トレンドであろう。
JFR、増収2桁減益 SCとデベロッパーが好調
J.フロントリテイリングの25年度(26年2月期)第2四半期(3~8月)連結業績は増収2桁減益だった。総額売上高が前期比2.0%増の6225億円、事業利益が13.2%減の281億円、営業利益が23.9%減の299億円、中間純利益が36.9%減の183億円。SCとデベロッパー事業が好調だったものの、前期が好調だった百貨店事業の減収2桁減益が響いた。
百貨店事業は、総額売上高1.3%減の3938億円、事業利益20.3%減の160億円、営業利益14.0%減の166億円。減収はインバウンドの急減速が主因。前期の円安やラグジュアリーブランド値上げ前の駆け込み需要の反動減で、大丸松坂屋百貨店の免税売上高は22.3%減の469億円となり、売上高シェアは前上期より3.7ポイント減の12.8%にダウンした。
店舗別売上高では、大丸心斎橋店(前期比5.2%減)、京都店(同12.4%減)などインバウンドシェアの高い店舗を中心に減収。ただインバウンド急減速は客単価の大幅減(3割減)が主因で、客数は中国とタイの訪日客が増え、約1割増加している。さらにキャラクターコンテンツの拡充が奏功した梅田店の免税売上高は約3割増加し、全店売上高も12.7%増だった。
髙島屋、利益の計画超過 百貨店の商品利益率改善
髙島屋の25年度(26年2月期)第2四半期連結業績は、国内百貨店事業のマイナスの影響によって減収減益。しかしながら中間純利益は固定資産の売却益によって増益で、各利益段階は6月末の修正計画よりも超過した。総額営業収益は前期比3.9%減の4871億円、営業利益が17.8%減の236億円、経常利益が27.2%減の220億円、中間純利益は11.2%増の212億円。
国内百貨店事業は、総額営業収益4.9%減の4018億円、営業利益33.3%減の96億円で減収2桁減益。ただし6月計画比では総額営業収益で0.9%増、営業利益で20億円の超過になる。減収の主因は前期の反動減を強いられたインバウンドで、29.4%減(182億円減)の438億円。ただ6月計画比では18億円の上振れ。客数が徐々に回復し、単価のマイナス幅も縮小していることから、下期は6月計画(400億円)を据え置き、通期では前期(1160億円)より320億円減の840億円を予想している。
一方の国内顧客の売上高は前年実績を上回り、既存店比で2%増。外商顧客、外商以外ともに堅調で、商品別では安定した食品に加え、ファッションが回復基調に転じた。特選ブランドなど高額品の売上高構成比が下がったため、商品利益率(百貨店店頭)は前期より0.12ポイント増の22.23%に改善した。
三越伊勢丹HD、営業利益 過去最高予想を据え置き
三越伊勢丹ホールディングスの25年度(26年3月期)第2四半期(4~9月)連結業績は、インバウンド(免税)の前期の反動減の影響を最小限に抑えるため、国内の識別顧客の売上げ拡大および販売管理費のコントロールによってカバーした結果、営業利益はほぼ計画通りに着地した。総額売上高は3.7%減の5962億円、営業利益は9.8%減の314億円、経常利益は14.5%減の331億円。中間純利益は関連会社の株式売却益が寄与して、15.7%増の293億円となり、上期として過去最高を更新した。
主力の百貨店事業は、総額売上高が3.9%減の5524億円、営業利益が13.9%減の254億円の減収減益。三越伊勢丹(5店舗)の総額売上高は2.0%減の3578億円。このうち首都圏基幹3店舗では、伊勢丹新宿本店が2.9%減の1924億円、三越銀座店が2.6%減の577億円の減収だったが、国内顧客シェアが高い三越日本橋本店は1.1%増の771億円の増収を遂げた。減収店舗でも識別顧客を中心に国内顧客の売上高は堅調に推移した。三越伊勢丹グループの識別顧客の売上高は4%増となり、中でも年間300万円以上の購買顧客は11%増だった。
三越伊勢丹合計の免税売上高は24.3%減の517億円となり、前上期より166億円減少した。売上高構成比は4.3ポイント減の14.5%。伊勢丹新宿本店は29.5%減の270億円(構成比14.1%)、三越銀座店は14.1%減の209億円(同36.2%)だった。
H2O、予想の利益超過 食品や商業施設が寄与
エイチ・ツー・オーリテイリングの25年度(26年3月期)第2四半期連結業績は、減収減益だったものの、営業利益が計画を上回るなど概ね想定通りに着地した。総額売上高は0.5%減の5554億円、営業利益は21.0%減の118億円、経常利益は22.1%減の124億円、中間純利益は前年第1四半期に計上した特別利益の反動もあり74.5%減の69億円。営業利益は、食品事業、商業施設事業、その他事業が想定を上回り、期初予想より8億円超の上振れとなった。
百貨店事業は、総額売上高6.0%減の2865億円、営業利益34.7%減の82億円。インバウンドの反動減と改装に伴う売場閉鎖の影響もあり、期初予想に対しても総額売上高、営業利益ともにマイナスだった。免税売上高は29.1%減の490億円。売上げ規模が最も大きい阪急本店は29.7%減の393億円、博多阪急が33.0%減の58億円だった。免税売上高の下期予想は560億円で、通期では期初予想より50億円減の1050億円に修正した。
阪急阪神百貨店の店舗別売上高では、インバウンドの減速と改装工事の影響を受けた阪急本店が9.2%減の1605億円、博多阪急が8.6%減の305億円の減収となった。対して、改装を手掛けた阪神梅田本店が阪神タイガース優勝セールの押し上げ効果もあり11.5%増の343億円、川西阪急スクエアが1.0%増の59億円、高槻阪急スクエアが3.2%増の121億円など、好調だった。
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