2024年12月06日

パスワード

購読会員記事

角川武蔵野ミュージアムで「ツタンカーメンの青春」

世界で最も有名な王の1人であるツタンカーメンに焦点をあてた

ところざわサクラタウンにある角川文化振興財団が運営する角川武蔵野ミュージアムで、「体験型古代エジプト展 ツタンカーメンの青春」が始まった。場所は1階のグランドギャラリー。連動企画として「神秘のミステリー!文明の謎に迫る 古代エジプトの教科書」も、4階のエディットアンドギャラリーで23日から始まる。いずれも11月20日まで。

考古学者のハワード・カーターが、1922年にツタンカーメンの王墓を発見してから昨年で100年。本展は世界で最も有名な王の1人であるツタンカーメンに焦点をあてた。展覧会のコンセプトは「HISTORYはSTORYだ」。歴史の中には物語があるという考えに基づき、3000余年前の歴史上の人物として捉えがちなツタンカーメンを、生身の人間として捉え、その時代にどう生きて何を思ったかを豊かに想像できる展示空間をつくり上げた。

展覧会の内容は、その時代を生きた生身の人間であることを根底に置き、少年王の生き様と物語を、精緻な複製品の数々と最新デジタル技術の融合によって追体験するというもの。これまで行われてきた美術展示とは一線を画し、歴史とテクノロジーを融合させた体験型の展示会となる。

黄金のマスク(撮影:松尾正美)

展示されているのは世界に3セットしかない超複製品(スーパーレプリカ)。有名な黄金のマスクや玉座のほか、ツタンカーメンの王墓に収められていた副葬品のうち、約130点を精巧に再現したもの。レプリカならではの展示方法で様々な秘宝を目の前で見ることができる。

本展では古代エジプトを体感する展示も行われる。会場内の大空間では壁と床にプロジェクトマッピングを投影し、古代エジプトの創生から神々の変遷をたどるとともに、ツタンカーメンの生涯を目で、耳で、体で感じることができるデジタルコンテンツ。さらに、エジプトから門外不出となったツタンカーメンのマスクや厨子といった副葬品の数々を「ワールド・スキャン・プロジェクト」の最新技術による高精細3Dスキャンデータから映像コンテンツ化し、超大型スクリーンにデジタル展示する。来場者はその展示物をNFTアートとして持ち帰ることができる。

そのほかにも、ハワード・カーターとそのパトロンであったカーナヴォン卿が体験した“世紀の発見”を、来場者が追体験できるインタラクティブな空間展示や、王墓の再現、若きファラオの生活を創造し体験できる「ツタンカーメンの日常」、一神教と多神教の間を揺れ動いた古代エジプトの死生観やミイラを解説するエリア、造形文字の「ヒエログリフ」の読み方解説など、多彩に展開する。

黄金の玉座(撮影:松尾正美)

儀式用チャリオット(撮影:松尾正美)

展示会場を入ってすぐのエリアにある序章の 「ツタンカーメンの王墓」は、ツタンカーメンの王墓を再現した空間。通路に開けられたのぞき穴からは奥にある副葬品が見られ、100年前のカーターやカーナヴォン卿の発見を追体験できる。序章の先にある第1章は「ツタンカーメンの青春」のエリア。少年王ツタンカーメンの生活や結婚事情に迫り、黄金の玉座、儀式用戦車、青銅製ケペシュ剣、サンダルといった数々の副葬品から、王として、夫として、戦士としてのツタンカーメンへの想いに浸れる。第2章は「古代エジプトの死生観とミイラ」。古代エジプトでは死は終わりではなく、地上の生活から来世への移行とみなされていた。そうした彼らの死生観とそこから生まれたミイラに着目し、ツタンカーメンのミイラの特徴についても展示する。

第3章は「古代の神聖な文字ヒエログリフ」。古代エジプトの造形文字であるヒエログリフの基礎知識や解読方法に加え、実際にはどのようなものにどのようなことが書かれていたのかなどを解説する。第4章の「古代エジプトの信仰」では、多くの神々を崇拝する多神教の神々の特性を紹介し、その多神教を否定したアクエンアテンの宗教改革を説明している。

今回の展覧会には、製作スタッフとして各界のエキスパートが集結した。監修はエジプト考古学者で名古屋大学高等研究院准教授の河江肖剰氏。米国古代エジプト調査協会のメンバーにして、米国ナショナルジオグラフィックのエクスプローラーにも選出されている。空間設計デザインは映画「ALWAYS三丁目の夕日」、「永遠の0」で日本アカデミー賞最優秀賞を受賞した美術監督の上條安里氏が担当。音楽監督は「機動警察パトレイバー」や「攻殻機動隊」の劇場版楽曲を作曲した川井憲次氏が担当し、本展に合わせて作曲されたオリジナル楽曲「ツタンカーメンのテーマ」が会場の各所に流れる。

連動催しとなる「神秘のミステリー!文明の謎に迫る 古代エジプトの教科書」展は、ツタンカーメンの青春展と同じくエジプト考古学者の河江肖剰氏が監修。ナツメ社より刊行された同タイトルの書籍の内容を元に構成。古代エジプトの歴史だけではなく、ファラオや神々、ピラミッド、当時の生活などを多角的な視点から紹介する。

(塚井明彦)