2024年12月15日

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三陽商会の「ポール・スチュアート」、ウエアから雑貨までカスタマイズを楽しむ企画

今秋からスタートする企画「customLAB(カスタムラボ)」。幅広いアイテムを揃えて展開する

三陽商会の「ポール・スチュアート」のメンズは今秋、ウエアや雑貨を自分仕様にカスタマイズできる「customLAB(カスタムラボ)」をスタートする。米ニューヨーク(NY)にあるポール・スチュアートの店舗で行う簡易オーダーサービスで、同社が商標を取得。“日本版”として展開する。アイテムはコートやジャケット、シャツなどのウエアから、ベルトやグローブ、傘などの小物まで幅広く揃える。自身の体型に合ったサイズ調整をはじめ、生地やボタンといった素材のセレクトなど、アイテムごとに高い自由度でカスタムを提案。客が楽しみながら、自分だけのオリジナルの一品をつくれる企画として打ち出す。さらに、同社の創業80周年を記念した商品も用意。サービス、商品共に充実化を図り、客のワクワク感を演出するシーズンに乗り出す。

ボタンなどのパーツから表地まで、選ぶ楽しみを引き出すカスタム要素を取り揃える

カスタムラボは、NYのソーホーにある店舗で実施しているサービスで、スーツをはじめシャツ、ジャケットなどを客が好みに合わせてカスタマイズできる。これを「日本でも客自身がカスタマイズを楽しめる企画として表現できないか」と検討を開始。NYではオランダに本社を置くMunro(ムンロ)社が生産を行うが、物流コストの問題から国内での製造とした。同ブランドのサブライセンスを持つメーカーからの協力も得て、“日本版カスタムラボ”の運営体制を構築。3月にはカスタムラボの商標を取得し、今秋のスタートを実現した。

カスタムできるアイテムは多岐に渡る。ウエアはコートやレザーアウター、カラーセーターに加え、NYと同様にスーツ、ジャケットといったテーラーリングのパターンオーダーも提案する。

コートは、「スタンドカラーコート」とブランドのシグネチャーでもある「クリフォードコート」の2型を用意。着丈と袖丈が補正でき、表地の生地は約10色を揃え、ボタンや裏地も選択できる。生産はサンヨーソーイング青森ファクトリーで、納期は約40~50日、価格は15万4000円~となる。

「レザーアウター」は3パターンを用意し、身幅の補正も可能。体に十分フィットする一着を提案する

レザーアウターは3つのデザインで展開。メンズの「S2Bジャケット」と「フライトジャケット」、レディースの「ノーカラージャケット」をラインナップする。納期は約40日で、価格は15万4000円~となる。選べる革は羊革や牛革、スエードなどの約60色で、ボタン、裏地、ファスナーも取り揃える。裏地には、2013年に国内展開を始めた同ブランドのメンズライン「PHINEAS COLE(フィニアス コール)」のスカーフが使用できる。

補正箇所は、着丈、袖丈、肩幅、胸囲、胴囲と、細かく設定した。事業本部ポールスチュアート・スコッチハウスビジネス部商品運営課長の高橋純氏は「レザーは袖丈や着丈をカスタムすることは割とできるが、身幅を合わせることはなかなかできない」と、仕立てに言及。同社が持つ高いパターン技術を用いることで「本当に自分のサイズ感でつくることができる」と自信をのぞかせる。

軸となるのはビジネスウエアだが「周辺アイテムのカスタマイズも楽しんでもらいたい」と、様々な雑貨も用意する。傘は、長傘や折り畳み傘のタイプ、布柄やハンドルの材質を各種から選べる。グローブは、サイズやデザイン、裏地やカラー、イニシャルの刺繍など細部にまでこだわることができる。冬のワードローブとしてだけでなく、ドライビング用などコアなニーズの取り込みも視野に入れる。そのほか、ネクタイやカフス、ベルトなど、ポイントでおしゃれを楽しむアイテムも揃える。

カスタムラボでオーダーが決定しているレディースアイテムは、レザーアウター、カラーセーター、シャツ、グローブ、傘の5種類で、現在サブライセンシー社と話を詰めている商品もある。ポール・スチュアートのレディースでは、既にジャケット、パンツ、スカートのオーダーメイドを手掛けているが、レディースのオーダーは市場でもまだ浸透し切っていない現状があるという。「最終的にはカスタムラボの全アイテムでメンズ、レディース共にカスタムできるようにしたい」(高橋氏)。

今後の展開に向けて、準備は着々と進んでいる。旗艦店である青山本店では常設化が決定しており、8月から立ち上げる。百貨店のイベントスペースを活用したポップアップの開催についても、交渉を進めている。高橋氏は新規顧客を取り込む間口として百貨店を重視する。インバウンドの復活を筆頭に活況を呈する各百貨店。その高い集客力を生かして、認知度の拡大を図る狙いだ。

高橋氏は「カスタムラボは新規顧客だけでなく、既存顧客にも喜んでもらえる企画だと思っている。お客様のワクワク感を演出できるようにやっていきたい」と力強く語る。NYと連動した販促を打ち出し、ポール・スチュアートにしかできない価値として提供する。

ポール・スチュアートを象徴する「パケ柄」のジャケット。復刻商品として8月に投入する

今秋はこうした期待度の高い企画に加え、三陽商会が今年創業80周年の節目であることから記念商品も揃える。7月1日に「メランジツイルライト」のジャケットとパンツを投入。売れ行きが好調なブランド最軽量モデルで、仕様を秋冬バージョンに落とし込んだ。夏場に汗をかくことを踏まえ、ウォッシャブルタイプの機能性ウエアとして提案する。8月2日には、夏らしく爽やかな印象の「パケ織柄ジャケット」を用意。パケ柄はブランドのアイコンとなる柄で、NYのバイヤーがベルサイユ宮殿の寄木細工のような床の柄をモチーフに誕生させた。NYではスポーツジャケットにも使用され、80周年を祝うアーカイブとして復活する。

10月4日には2種類のコートが登場する。「パーテックスバルカラーウェザーコート」は、表地に通気性と軽さが特徴の「パーテックス シールドエア」を使用。21年に発足した全社横断プロジェクトで開発した商品にも採用した、先進的機能素材だ。コート内側の取り外し可能なベストライナーには、超微細なマイクロファイバー素材の「プリマロフト」を使用し、十分な保湿性を維持。ウエストを絞ることで、エレガントですっきりとした印象を与えるデザインも打ち出す。

「ブロックチェックコート」は、日本とNYそれぞれのディレクター2人が開発。ブランド初の共同企画としてアピールする

大きなチェック柄が洗練された印象の「ブロックチェックコート」は、「共同で一着のコートをつくろう」というコンセプトのもと、日本とNYそれぞれのディレクターが2人で企画・開発した。レディースとも連動した色と柄で、日本とアメリカの双方で販売する。ブランド初の試みで、80周年という記念すべきタイミングでの開発もコレクションを盛り上げる。

5月11日に創業80周年を迎えた三陽商会。新たな始まりへの期待と意欲を胸に、撮影に応じる大江伸治社長

9日に開かれた展示会には、大江伸治社長も登壇した。「前シーズンより濃いラインナップになっていると確信している。これらの商品に込めた想いをぜひ感じ取っていただきたい」とメッセージを発信。さらに今後に向けて「80年の間、当社に蓄積されてきたアセットとリソースをしっかりと生かして、さらなる発展と成長につなげていきたい」と意欲を述べた。

(中林桂子)