11月から免税の「リファンド方式」スタート 百貨店への影響は
全国免税店協会が主催したメディア向け説明会より
11月1日から、新しい免税手続きの「リファンド方式」が始まった。これまで店頭で税抜き価格で販売していたが、税込み価格での販売、出国時に税関確認を経て税金分を還付する方式に変わる。横行する不正転売の防止や、店頭での販売手続きの簡素化を目的とするが、訪日外国人旅行者の動向や百貨店にはどんな影響があるだろうか。観光庁や国税庁、財務省関税局といった関係各省庁から登壇者を迎え、全国免税店協会が主催したメディア向け説明会、ジャパンショッピングツーリズム協会の新津研一代表理事・事務局長へのインタビューと共に、百貨店に行ったアンケート結果を交えて報告する。
上限撤廃や手続きの簡素化が追い風か
メディア向け説明会で国税庁課税部消費税室長の濱田正義氏は、リファンド方式移行の狙いについて「免税購入品の国内での横流し等の不正に対応するため」と説明した。変更点は、以下の4点。
①税込み価格での販売②免税対象物品を国外に持ち出す際は90日以内の出国時に税関確認を受ける③免税店事業者は税関確認情報を保存し免税適用を受ける④免税店事業者は確認後に返金(リファンド)する――だ。
財務省関税局監視課長の松田真吾氏は、免税購入品の国内での横流し等の不正対応策は「Visit Japan Web」を活用すると説明した。訪日外国人旅行者は購入時にパスポートなどを提示、「Visit Japan Web」に返金方法を登録、出国時に税関確認を行い、空海港に設置される端末で返金の可否が判定される。成田や羽田、関西などの主要空港では、端末以外にスマートフォンでも手続きが可能になる。

2026年11月1日免税制度『リファンド方式』移行に関するメディア向け説明会資料より
免税販売要件も緩和される。①一般物品と消耗品の区分を撤廃②50万円までの免税対象購入上限額の撤廃③免税対象物品の用途不問(対象外あり)④特殊包装の廃止――だ。

2026年11月1日免税制度『リファンド方式』移行に関するメディア向け説明会資料より
全国免税店協会の秋田正紀会長は、免税カウンターでの現金返金がなくなることによる店頭での売上げ減少を心配する声に対し、「一般物品と消耗品の区分、免税対象金額の上限が撤廃されることによる購入額増加、手続きの軽減化など、販売店が享受するメリットの方が上回ると考えている」と語った。
訪日外国人旅行客の購買動行も高級時計やラグジュアリーブランドのバックや靴などが中心だったことがあり、「あまり変わらない」との見解だ。全国免税店協会の大本昌宏副会長も、「高額商品の売上げ伸長につながるだろう」と予測する。

全国免税店協会の秋田正紀会長
特殊な包装の廃止も店舗側の手間が不要になる。訪日外国人旅行客も品物をスムーズに受け取れ、買い物の時間が短縮される。特に何軒も買い回りする場合を考慮すると、双方にとってメリットが多い。
地方にも消費・経済活動が波及
観光庁観光戦略課長の菅原晋也氏は、観光政策を推進する国家計画の「観光立国推進基本計画(第5次)」に触れた。「官民が連携し、地方における消費税免税店の拡大を推進する。地方部の免税店の増加や消費拡大に取り組む」ことも明言した。事例として、北陸新幹線延伸による訪日客増加を見据えた免税店化の加速を行った福井県、県庁の免税店負担軽減策による地場産業が活性化した山梨県、インバウンド受け入れ体制の整備強化を図った徳島県を挙げた。
リファンド方式への移行で、免税販売手続きを外部委託できる範囲は拡大する。全国免税協会の井原純子事務局次長も「人手が足りない、外国語対応が難しい、免税システムの操作が不安、下限額の5000円に満たない買い物が多いなどの問題を抱える事業者が多い地方には、免税販売手続きの委託が解決手段となる」と、地方への波及効果を説いた。
リファンド方式の世界最後発ゆえのメリット
ショッピングツーリズムを軸にインバウンド振興を推進する業界団体のジャパンショッピングツーリズム協会の新津研一代表理事・事務局長は、リファンド方式への移行について「コストも手間も税務リスクも小売店が負っていたが、受益者である訪日外国人旅行者が負う本来の形に戻った」と言う。小売店は免税対象者か否かの判断からも解放される。「小売店はあくまでもお客様に商品をお買い上げいただく立場。転売を監視する立場ではない」(新津氏)。
商用と個人用の判断が不要になることも「負担軽減として大きい」と指摘する。さらに「例えば、化粧品100個、高級腕時計10本などの購入に対応する場合、商用か個人用かを尋ねる必要があったが、今後は外商顧客か法人外商かの対応に代わり、そこから新たなビジネスチャンスにもつなげられる」とも提言する。

ジャパンショッピングツーリズム協会の新津研一代表理事・事務局長
今回の移行は世界的に最後発となる。新津氏は「現金還元ではなくクレジットカードかQR決済に戻す、ステーブルコインで返金するなどデジタル化されるだろう。最後発だからこそスマートなシステムになり、そこにも商機が見出せる」と語る。日本は民間事業者が返金するシステムを採用。新津氏は「サービスの差別化が生まれる」と予測する。返金について「現金かクレジットかという選択以外に、ポイントを上乗せして提示することもでき、自社での消費行動に結びつけられる」(新津氏)。
地方は産地の強み、大都市は国際競争力UPを
訪日外国人旅行者の特性として新津氏は「訪日リピーターは日本らしい商品を好む傾向にある」と言う。伝統工芸品などは大都市の百貨店でも購入できるが、「旅行と併せて産地での買い物体験を楽しみたいだろう。地方の百貨店は、その土地にしかないもの、売りたいもの、売るべきものを売る形で、外国人旅行客の購買増につなげていけるのでは」(新津氏)と提言する。
一方で、大都市の百貨店は「立地する街のブランド力が鍵」と述べる。日本が14年に現制度を導入した直後、韓国はリファンド式だったにも関わらず、一部特例を出し、後追いする形で導入している。「恐らく来年度も店頭などでの即時還付は継続されるだろう。隣国の動向は見過ごせない。日本の大都市の百貨店は、海外プロモーションの展開法と、国際競争力を上げることに注力するべき」と語った。
リファンド方式への移行で価格や手数料に敏感になりがちだが、新津氏は「現時点でも手数料を取っている店舗があるが、売上げは伸びている。訪日外国人旅行客が選ぶのは価格ではなく、サービスや品揃え、立地などさまざまな要素」と指摘する。地方も大都市も共に強化していくべきポイントであり、「オールジャパンの意識で取り組めば、日本のショッピングディスティネーション化が実現するのでは」(新津氏)と今後を見据える。
大手百貨店の8割が新制度を肯定的に評価
デパートニューズウェブでは、10月に首都圏・関西圏の大手11社にアンケートを行った。リファンド方式へ移行することに対し、「良い」が約8割、「特にない」「一時的に良くない」がそれぞれ1割、「良くない」との回答はゼロだった。想定するリファンド方式への移行の影響については、「店頭での消費税返金がなくなることで導入当初は売上げが一時的に減少する可能性を想定するが、周知が進めば落ち着くと予測」という声が多かった。「売上げへの影響なし」との回答もあった。
ほかにも「上限撤廃による買い上げ額アップ」や、「消耗品購入限度額撤廃によるまとめ買いや買い回りを促進できる」と前向きな声が届いた。「返金作業がなくなる、商用か否かの判断が不要になるのは良い」「売場販売手続きの簡素化が進む」「特殊梱包がなくなり、買上物品の分類が不要になるのは良い」「将来的な業務効率化に期待」と肯定的な意見が多数を占めた。
政府は30年に訪日外国人旅行者数を6000万人、訪日外国人旅行消費額を15兆円とする目標を掲げ、観光立国を推進する方針を打ち出している。観光庁によると、25年の訪日外国人旅行消費額は9.5兆円。自動車産業の17.6兆円に次ぐ第2位の輸出分野にまで成長しており、買い物消費額は2.6兆円に達する。リファンド方式への移行を追い風とできるか。しばらくは、百貨店各社の動向に注目が集まるだろう。
(北野智子)