伝統芸能からマンガ、音楽、宇宙まで 高輪ゲートウェイシティに実験的ミュージアム開館 100年先へ文化をつなぐ
外装には草花や木々が植えられており、時間とともに成長していく様子も楽しめる
JR東日本文化創造財団は3月28日、高輪ゲートウェイシティの文化創造を担う拠点「モン タカナワ ザ ミュージアム オブ ナラティブズ」を開いた。外装デザインは隈研吾建築都市設計事務所。「100年先へ文化をつなぐ」をコンセプトに、伝統芸能からマンガ、音楽、宇宙まで多彩なプログラムを展開する。地下3階から地上6階に約1500㎡の展示空間、ステージ全面にLEDを備えた約1000㎡の最新シアター、約100畳の畳空間、屋上テラス、足湯などを備える。

ステージにLEDを設置したシアター空間「ボックス1000」。こけら落としは4月22日から、手塚治虫の「火の鳥 未来編」を上演する

実験空間「ボックス300」では開館記念プログラム「ひらけ モン!展」を開催している
大型LEDシアター、100畳の畳、足湯と多彩な空間
名称の「モン」には「門」と「問」の意味がある。伝統とテクノロジーアート、サイエンス、都市と自然、パフォーマンスと展覧会など、これまで交わることが少なかった領域を超え、様々な分野をつなぎ、訪れる人に問いかけ、新しい発見や出会いの場所となる願いが込められている。この場所で生み出される「物語(ナラティブズ)」を世界と共有し、未来へつないでいく意思も込められている。
文化はらせん状に動き、移り変わると考え、外観にはらせん構造を取り入れた。過去、現在、未来が重なりながら文化が続いていく時間を象徴するという。スパイラルを描くロゴでも表現している。

目を引くデザインが至る所に散りばめられた館内
館内のイベントスペースは、広さを表す平米数を用い「ボックス300」「ボックス1000」「ボックス1500」と名付けられ、様々な用途に応える。ボックス1500は年2回開催されるシーズンテーマを代表するプログラムを体現できる大規模展示空間。ボックス1000はステージ全面にLEDが設置された最新シアターで、ステージ上の役者の表情など詳細な表現を大型LEDで再現し、どの席からも演者の演技が身近に感じられる演出も可能だ。ボックス300は壁が開閉する自由な実験空間になっている。4階にはプロジェクターを備えた約100畳の畳の間があり、歴史ある屏風を再現するなど、日本の伝統文化とテクノロジーを掛け合わせたプログラムを展開する。

約100畳の畳の間「tatami」
ほかにも館内には青山のアートセンター「スパイラル」が手掛けるカフェやレストラン、アートと雑貨のセレクトショップ、ライブラリーなどがある。屋上には「月見テラス」や「足湯」、「モンガーデンレストランラウベ」、神社、菜園などもあり、一日中過ごせる構成になっている。

屋上の「月見テラス」。江戸時代、高輪は月の名所だったという
100年先まで街の価値を高める文化施設
「高輪ゲートウェイシティ」は、JR東日本グループが単独開発した「100年先を見据えた国内外への玄関口・グローバルゲートウェイという役割を受け継ぐ街」。同日に開業したJR大井町駅直結の大規模複合施設「大井町トラックス」と、すでに開いている竹芝、浜松町、田町、品川エリアで広域品川圏を形成する。一帯では1日約1500万人のJR東日本管内利用者や約1700の駅といった広範な鉄道ネットワークを生かし、様々なサービスソリューションを展開していく。
東日本旅客鉄道マーケティング本部まちづくり部門品川ユニット TAKANAWA GATEWAY CITY(運営戦略)マネージャーの天内義也氏は「品川エリア全体がビジネス街としてのイメージが非常に強い。100年先に向け、文化施設が街の価値を高めていくと考えた。『モン タカナワ ザ ミュージアム オブ ナラティブズ』には、地域の方々が無料で利用できるスペースがたくさんあり、公園のような存在になって欲しい。インバウンドを含め、休日でもここに来れば新しい体験ができる新たな目的地になれば。365日集客する施設になることを願っている」と語った。

ワークショップなどを開催するスペースもある
JR東日本文化創造財団アーティスティック・ディレクターの内田まほろ氏は「国際的に文化を発信していく施設として、強いビジュアルが必要と考え、世界的なデザインスタジオの『ペンタグラム』にオファーし、コンセプトづくりから共に過ごした。3色のコンセプトカラーは高輪の豊かな自然をイメージし、太陽の赤、大地の緑、海の青で構成しているが、日本の文化的な背景や色の持つ意味などを伝えながらディスカッションを重ねて生まれた。ロゴやサインなどグローバルな視点でつくられたデザインではあるが、日本のこの地でしか生まれなかったもの。館内では日本文化とグローバルなクリエイティブが平面で混ざり合った空間が展開されており、そこに面白さがあると思う」と述べた。

青山のアートセンター「スパイラル」が手掛ける1階のカフェと2階のレストラン
ペンタグラムのプロデューサーのNavneet Bhatia氏とシニアデザイナーのAlice Sherwin氏は「『100年先へ文化をつなぐ』というコンセプトは、時間軸のスケールが大きく、プログラムの構成を含めたブランディングまですべてに一貫性を持たせることにとてもやりがいを感じた。名称の『ナラティブ』は抽象的であり、人を惹きつけ、印象にも残ると思う。訪れた人々には館内を歩き回りながら、色に込められた思いや館内で表現されている感性、私たちが伝えたいことを感じてほしい」と語った。
(北野智子)