<ストレポ2月号掲載>百貨店だからこそ プレミアム市場の創造
単に高額品を取り扱うだけでなく、館の滞在価値も問われている(画像はイメージ)
超富裕層、富裕層、準富裕層、アッパーマス層の世帯数並びに純金融総資産額が増加傾向にある。釈迦に説法だろうが、富裕層の消費ニーズは多様化しており、百貨店がここ数年の改装で強化・拡大しているラグジュアリーブランド、高級時計、宝飾品、アートとった高付加価値商材だけに限らない。様々なプレミアムマーケットで、百貨店ならではの高質・高感度な体験価値の提供が問われている。
※この記事は、月刊ストアーズレポート2026年2月号掲載の特集「百貨店だからこそ プレミアム市場の創造」(全19ページ)の一部を抜粋・編集して紹介します。購読される方は、こちらからご注文ください。(その他2月号の内容はこちらからご確認いただけます)
特選、美、アート領域の拡大続くも、「ならではの高質・高感度MD」カギ
大都市の百貨店が改装で強化・拡大している領域は、「ラグジュアリー(特選・時計・宝飾)、ビューティー(美と健康)、フード(食・飲食)」と、30代、40代の富裕層の関心が高まっている「アート・カルチャー」を加えた4領域である。加えて高質・高感度なファッション領域の再強化も活発化してきている。百貨店が培ってきた本来の「強み」を発揮できる領域であり、対象顧客の関心が高いこだわり消費に対応できる領域である。
都市型の基幹百貨店では、改装を機にラグジュアリーブランド、時計・宝飾、アートの拡大もさることながら、ファッション、リビング、フードといった百貨店本来の強みを発揮できるMDで、「高質・高感度化」が進んでいる。
むしろ昨今の株価など資産価値向上に伴い増加傾向の準富裕層やアッパーマス層を意識した「高質・高感度MD」こそ、各々の百貨店の特徴を具現化でき、各店各様のモノ・コト・サービスの体験価値を提供できる。「非日常空間」や「あこがれ消費」を提供してきた百貨店本来の存在価値であろう。
松坂屋名古屋店、クリエイティビティと地域との共創を具現化
松坂屋名古屋店の段階的大改装は、J.フロントリテイリング(JFR)の26年度までの中期3カ年経営計画の重点プロジェクトの1つで、約63億円を投じた。対象フロアは本館の3~8階(屋上含む)、北館の地下1階と6階で、改装面積は全館(8万6758平米)の3割超に当たる約2万7000平米におよぶ。
展開コンテンツを大幅に再編成した。ラグジュアリーブランドの継続的な拡充に加え、ファッション、アート、酒、美や健康などで次世代のマーケットニーズを捉えたコンテンツを導入して、新たなライフスタイルを提案している。特に強化した領域は売場面積の拡縮に表れており、ラグジュアリーが改装前比で約1.4倍、アートが約2.5倍に広がり、対照的に婦人服は約6割減(既存ブランド比で7割減)まで縮小した。
MD再編で注目したいのが、従来の百貨店婦人服から脱却する新たなファッションフロアのスタンダードを目指した本館3階と4階であろう。両フロアで約6割のブランドを入れ替え、3階は「世界のファッションシーンをけん引するクリエイティブなブランドを中心に、世界のトレンドに触れられるインターナショナルブティック」に、4階は「日本から発信するラグジュアリーを目指すブランドを中心に、服だけでなくジュエリーや香りなどライフスタイルを豊かにするアイテムの集積によって新しい感性との出会いを生み出すフロア」に刷新した。
この4階こそ、ジャパンラグジュアリー、クロスマーチャンダイジング、自主編集売場などで構成する同店ならではの新たなファッションフロアであり、3階インターナショナルブティックとともに、高感度高質なファッション・ライフスタイルを提案する独自のプレミアムゾーンを形成していると言えよう。
池袋西武の「新しい百貨店」上質と特別な高揚感を創出
昨年7月より順次披露されている西武池袋本店の全館改装は、そごう・西武が「新しい百貨店」の創造に挑戦する一大プロジェクトだ。同社が23年9月より米投資ファンド、フォートレス・インベストメント・グループ傘下で事業戦略を再構築していく先兵であり、今後の持続的成長を左右する。
売場面積が縮小されるため、MDは「ラグジュアリー、コスメ、フード、アート」の4領域を中心に構成する。先陣を切り、昨年7月9日に3階コスメティックスが先行オープン。次いで12月に1階のフレグランスブティックゾーンが完成した。
全館改装第2弾として、「イケセイデパチカ」が昨年9月より順次オープン。そして昨年11月より12月にかけて2階、4階、6階のインターナショナルブティック(メンズ&レディース)と5階のジュエリー・ウォッチが順次オープンしている。多くがメンズ&レディースの複合型となり、広々とした空間で世界基準の上質を提供する。インクルージョンを象徴するゾーンだ。
今年1月以降に生鮮・酒売場、1階インターナショナルブティック、7階と8階のファッション&グッズ、ライフスタイル、イベントホール、アートギャラリーが順次オープンしていく予定だ。
そごう・西武が新しい百貨店づくりに挑戦している西武池袋本店の全館改装は、都市型基幹百貨店の拡大領域の潮流が凝縮された格好だ。富裕層向けのラグジュアリー(時計・宝飾含む)ゾーンもさることながら、これを囲む上質・高感度ファッション、コスメ、アート、そしてフードで、いかに西武池袋本店らしさ、百貨店ならではの体験価値を提供していけるかが肝要となる。
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