2021年09月28日

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京王新宿店、フルーツドリンクや精肉のサブスクが好評

「築地定松」のフルーツドリンクのサブスクは、1カ月で税込み5400円。毎日訪れる利用者もいる

京王百貨店新宿店が「築地定松」や「浅草今半」と組んで実施するフルーツドリンクや精肉のサブスクリプションが、じわじわとファンを増やしている。数量は限定だが、完売が相次ぐ。素材にこだわった食品を定期的に、値頃に食べたいという人々の心を掴んだ。京王新宿店や築地定松、浅草今半は、来店頻度や買い回りが向上。サブスクによる売上げは小さいが、波及効果は大きい。大丸松坂屋百貨店が手掛ける衣料品のサブスク、小田急新宿店のパンのサブスク、そごう広島店の洋菓子や惣菜のサブスクも人気で、百貨店版サブスクが熱視線を浴びる。

京王新宿店は今年1月に販売した福袋で、初めてサブスクを導入した。地下1階の食品売場にショップを構える築地定松と協業。税込み5400円で、1日に1杯のフルーツドリンクを飲めるようにした。この時は用意した50枚のチケットのうち27枚が売れるにとどまったが、利用者の好評を受けて定期化すると、3月には30枚(スタートが18日だったため数量を減らし、価格も2700円に抑えた)、4月には50枚、5月には50枚が、6月には50枚が、7月には50倍が、それぞれ完売。特に4月は初日で完売した。

利用者には京王新宿店が取り込みに注力する50代以下が多く、10代の男性をはじめ学生も含まれる。サブスクによる月商は50枚で27万円と多くないが、中心顧客の高齢化に悩む百貨店業界にとって“若返り”にはそれを上回る価値がある。1月の利用者のうち8人は築地定松の存在を知らず、新客の獲得にも貢献。サブスクが百貨店にもたらす効果は多岐に亘る。

利用者へのアンケートによれば、男性の健康志向も浮き彫りになった。次の一手に結び付く“生のデータ”だ。実際、サブスクでの売れ筋は「あまおう」(税込み799円)が断トツで、2位には野菜のケールがメインの「ケールミックス」(税込み499円)が入る。性別を問わず、健康志向は明らかだ。

仕掛け人である伊藤誠志生鮮・グロサリー売場売場マネージャーは「築地定松のフルーツドリンクは冷凍の果物の作り置きでなく、当日にカットしたフルーツを使い、出来立てを提供する。その美味しさ、価値を広く認知させるとともに、いつでも気軽に立ち寄れるようなイメージも形成したかった」と意図を説明する。

精肉や鮮魚と異なり、コロナ禍で旺盛な「巣ごもり需要」の恩恵が乏しい青果を活性化する狙いもある。青果は近隣のスーパーマーケットで購入されがちだからだ。築地定松は野菜も販売しており、伊藤氏は「フルーツドリンクをきっかけに、野菜にも手を伸ばして欲しい」と目論む。

その場で、生の果物をフルーツドリンクに仕上げる

築地定松の活況を受け、4月には浅草今半と精肉のサブスクにも乗り出した。全館営業を再開した昨年6月~今年3月の精肉の売上げは前年比2割減だったが、浅草今半は同1割減にとどまり、伊藤氏は「コロナ禍では外食を敬遠し、『自宅で美味しい肉を食べたい』という要望が強まった証」と判断。税込み1万800円で1カ月に3回、「焼肉用」、「すき焼き用」、「しゃぶしゃぶ用」のいずれかを400グラムずつ持ち帰られる仕組みで、4月には15枚が完売した。来店時に、すき焼き用や焼き肉用の肉、ハンバーグ、バーベキューセットなどを追加で購入する利用者も少なくない。5月の母の日や6月の父の日でも継続し、完売した。

「浅草今半」のサブスクは、主に歳時記や年末年始に合わせて展開する

“パートナー”の輪も広げる方針だ。「具体的には決まっていないが、例えば『妻家房』はコロナ禍でも売上げが前年に近い水準で、固定のファンが多い。キムチは100グラムで税込み1300円ほどと一般的には少し高いが、だからこそサブスクに向く。あるいは『大島水産』の干物を10枚・税込み3000円で販売すれば、支持は得られるのではないか」と伊藤氏。サブスクのチケットの保有者に対する、他の食品売場のショップでの特典も検討中だ。

近年は業種や業界を問わず、サブスク化が盛んだ。モノに十分な魅力が備わっていれば、定期的な売上げと来店が見込める。新客の獲得や既存顧客の来店頻度の向上を重点戦略とする百貨店業界こそ、その活用を研究すべきだろう。