26年歳暮商戦スタート、クリスマススイーツや体験型など多様化進む
そごう横浜店は、例年より早い10月30日にギフトセンターを開始した
今年も歳暮商戦が始まった。昨今は体験に価値を見出す消費傾向がみられることから、百貨店から「モノを通じて豊かな時間を過ごす」訴求が増えている。そごう・西武は「鍋ギフト」やクリスマススイーツで家族のだんらんや気軽な需要を狙い、三越伊勢丹は「時間を贈る」をテーマにコーヒーや体験型ギフトを打ち出す。いわゆる「お歳暮」だけでなく、年末年始の幅広い需要に対応する考えだ。
そごう・西武、鍋ギフトでだんらんの時間を提供
そごう・西武は目玉特集として、「鍋ギフト」をテーマにした「十鍋十色」を企画。香りを楽しめる鍋や、全国各地の特色ある鍋など、51種類を用意した。この意図について、MD2部フード担当マーチャンダイザーの高倉隼氏は「鍋は『贈って終わり』ではなく、家族や大切な方とのだんらんの場を提供するという付加価値がある」と述べる。
「年末年始の集い」に着目した施策は近年増えている。おせち商戦でも、いわゆる従来型のおせちだけでなく、パーティーに出せる洋風おせちやオードブルメニュー、鍋などを取り扱う百貨店は多い。長引く円安で海外旅行が減り、代わりに親戚や友人との集まりは増えると見込む。

そごう横浜店のギフトセンター
もう1つ、そごう・西武が注力するのがクリスマススイーツの拡充だ。以前から歳暮カタログにクリスマスケーキを掲載していたが、昨年は加えて、スイーツの掲載も始めた。これが想定以上に売れたことから、今年は前回の2倍の種類を掲載。シュトーレンやアドベントカレンダー、クッキー缶などをラインナップする。
高倉氏は「お歳暮という習慣になじみのない方にも、カジュアルに利用していただきたい。また、いわゆる『定番のお歳暮ギフト』だけにしないことで、毎年お歳暮を贈るお客様にも新鮮さを感じていただける」と狙いを説明する。こうした品揃えによって、売上げ目標は、前年比1%増(既存店対比)を目指す。
店頭の展開は、そごう横浜店が、例年より約14日早い10月30日にスタートした。「当社お歳暮の早期割引は例年11月末までで、店頭の注文も11月に集中する。ピークの期間はお客様をお待たせしてしまうこともあり、その解消のために前倒しした」(ブランドマネジメント部MD担当店舗マーチャンダイザーの藤原誠氏)。
店頭のギフトセンターには、ネットに不慣れな客や、返礼品を実物で確認したい客、販売員に相談したりしたい客などからのニーズがある。こうした需要に応え、地域住民に求められる役割を果たしていく考えだ。
三越伊勢丹、「時間を贈る」をテーマにコーヒーや国産ナッツを集積

三越日本橋本店で行われたセレモニーの様子
三越伊勢丹は、①国産ナッツ②コーヒー③体験型ギフトの3つをギフトの柱に据える。カジュアルギフトや自分へのご褒美需要が増えていることから、相手の暮らしや気分を豊かにする「時間を贈る」機会として提案する。三越日本橋本店のギフトセンターには、コーヒーを味わえるカフェも期間限定で展開する。
国産ナッツを使った商品は、三越日本橋本店が毎年行う商品企画「オンリー・エムアイ」から生まれた。これまでオンリー・エムアイは秋の一定期間に同店で販売していたが、初の試みとして一部商品を全国の三越伊勢丹でギフト好適品として取り扱う。
コーヒーはコロナ禍以降、自家用・ギフトの両方で需要が伸び、夏季も含め年間を通じて楽しむ動きがあるという。そこで品揃えを1割以上増やし、日常使いの商品に加えて、高価格帯である1万円台の商品も充実させた。元プロ野球選手のアレックス・ラミレス氏と「キャピタル」による限定コラボ商品も展開する。

三越日本橋本店では、ギフトセンターのオープン2日目でも、朝から多くの人が列をつくった
体験型ギフトとして、旅プランも販売する。佐賀県・嬉野にある旅館「和多屋別荘」に泊まり、茶園「きたの茶園」で特別な一杯を味わう「ティーツーリズム」を体験。朝食には「ピエール・エルメ・パリ」のカフェで焼きたてのクロワッサンを食べられるという内容だ。価格はAプランが39万1212円、Bプランが33万4271円(どちらも2人で1泊プラン)。
第1MDグループギフトデザイン商品部営業推進担当の吉田拓馬氏は、「このプランのコンセプトは『余白』。あえてイベントを多く詰め込まず、 2万坪の敷地を持つ和多屋別荘で、目的のない時間をゆったりと過ごしていただくことを考えた」と話す。
複数の他社と協業して企画した体験型ギフトは初の取り組みだという。吉田氏は「贈り物は、何もモノだけではない。お客様に飽きられないよう、トライアルをする必要がある。最近は世帯人数が少なくなり、『たくさんもらうと困る』という声もある」と語る。
歳暮そのものの市場は縮小する一方、カジュアルギフトやパーソナルギフトを含むギフト市場全体は増加傾向にある。体験に価値を見出す傾向や、価値を感じる部分には惜しまずお金を使う「メリハリ消費」が強まる中、日常の中のちょっとしたぜいたくを求める需要も根強い。こうしたニーズを捉え、歳暮の枠にとらわれない提案を打ち出せるかが、今後の鍵になりそうだ。
(都築いづみ)