三井不動産の社内ベンチャー、ミヤシタパークでブドウ狩り体験

2025/09/12 2:13 pm

三井不動産の事業提案制度で誕生した社内初のベンチャー企業であるグリーンカラーは9月12〜23日、ミヤシタパークでポップアップストアを開催する。渋谷という都心でブドウ狩り体験ができるほか、3種類のブドウを好みで詰め合わせるユニークな購入体験が可能だ。表参道の人気パティスリー「EMME(エンメ)」の延命寺美也シェフや「ONIBUS COFFEE(オニバスコーヒー)」の新デザートブランド「patisserie code(パティスリー コード)」とのコラボスイーツ、自社農場を展開する山梨県とニュージーランドのセレクトフードも販売する。

ブドウ狩りは天井から紐で吊るされたブドウをハサミでカットし、収穫を疑似体験できる仕組み。狩り終えるとスタッフが新しいブドウを紐で吊るし、新たな体験者を迎える。床にはウッドチップが敷き詰められ、足元が柔らかな感触に包まれるため、土の上にいるような感覚になる。「本当はブドウの葉やつるを敷き詰めたかったが今回は断念した」と代表取締役の鏑木裕介氏は語る。

パッケージは廃棄用紙をリサイクル。デザインにもこだわっている

店内ではシャインマスカットを1房3500円で販売する。3種類から好みで詰め合わせるブドウは小カップ900円。EMMEとのコラボショートケーキは1個900円、パティスリー コードとのコラボバターサンドは1個497円、パンナコッタは842円。山梨県の名産品としてワインやチーズ、チョコレートが、ニュージーランドからはマヌカハニーやコーヒーなどが登場する。ミヤシタパーク内の「カフェ キツネ」と「ミヤシタカフェ」もシャインマスカットを使ったアサイーボウルやクリームソーダといったコラボスイーツを数量限定で販売する。

EMMEとのコラボショートケーキ(右上)、パティスリー コードとのコラボパンナコッタ(左上)とバターサンド(下)

ミヤシタパークは三井不動産が運営する施設で、今回はグループネットワークを生かした展開だ。ミヤシタパークの商業施設「レイヤードミヤシタパーク」の北街区2階にグリーンカラーが出店した。自社ECサイトで販売も行っており、鏑木氏は「非常にシナジーを感じている」。百貨店では三越伊勢丹で販売し、中国や台湾、香港、タイ、シンガポールと海外にも販路を広げているが、「ブランドの認知度を高めていくことが喫緊の課題。日本品種の生食用ぶどうは国内消費が9割以上で、世界での認知度も上げていきたい」(鏑木氏)と目標に邁進する。

シャインマスカットは日本品種だが他国へ品種が流出し、同社の資料によると生産面積は日本が1600ヘクタール、韓国が1800ヘクタール、中国が53000ヘクタールという現状だ。「台湾や香港では日本産がメジャーではあるものの、韓国産が勢いを増している」(鏑木氏)。市場が熾烈さを増してきているが「ブドウは日照時間が長く、昼夜の寒暖差が大きく、降水量が少ない環境でおいしく育つ。農地の選択も重要」と鏑木氏は差別化を強く意識している。8月中旬から10月初旬に収穫する山梨県産のブドウを「表旬(おもてしゅん)」、2月中旬から4月初旬に収穫するニュージーランド産のブドウを「裏旬(うらしゅん)」と呼び、どちらも「甘みはもちろん、芳醇な香りに特徴があり、高級志向に対応できる」ことで強みを発揮したい考えだ。

祖父母が農家だった鏑木氏は三井不動産入社後、オフィスビルやアウトレット施設の法人営業、経営企画部などを経て、2018年に事業提案制度に応募した企画が採択され、19年にグリーンカラーを設立。10人の社員の平均年齢は29.2歳と高齢化が進む農業界では若い。EMMEの延命寺シェフはコラボに踏み切った理由を「農家と消費者をつなぐ仕事柄、若い農業後継者を応援したいと思っていた。社員の方々の熱意やぶどう作りへの想いに賛同した」と明かす。

シャインマスカットを手に代表取締役の鏑木裕介氏(左)と「EMME(エンメ)」の延命寺美也シェフ(右)

同社では若者が社員として定着し、新しい働き方と暮らし方を実践する。リタイア層が活躍したり、ボランティアのサポーター制度も整える。農業を通じて地方と都市、人と自然、世代間・国籍を超えたつながりを追求し、「自然と生きる」をビジョンに掲げる。「ホワイトカラーでもブルーカラーでもない、グリーンカラーという新しい生き方を目指していく」と鏑木氏は意気込みを語った。

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