昭和西川、工場新設で羽毛布団リフォームを強化

2023/11/24 12:00 am

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昭和西川は、羽毛布団のリフォーム事業を加速させる。埼玉県本庄市にリフォーム専用の工場を建設中で、来年3月に完成予定。本格的な稼働は7月頃となる。敷地面積1万1696㎡、建築面積2538㎡、延床面積3702㎡で、6つの羽毛洗浄ラインと3台の羽毛充填機を有する。2021年、メディアでの紹介を機に依頼が急増。SDGsの機運の高まりも追い風に、同社では羽毛布団リフォームの需要が急速に高まっている。23年度はすでに2万5000枚の加工を見込み、今後は年間5万枚の加工を目指す。工場新設による事業強化で、顧客のニーズに応えるとともに、企業プレゼンスを高める。

2021年の通販番組を機に、増加の一途を辿る

同社の羽毛リフォームの実績は右肩上がりだ。年間の加工枚数は、20年度が1260枚、21年度が1万150枚、22年度が1万7900枚。21年にテレビの通販番組で羽毛布団のリフォームを特別価格で行うと紹介したところ、依頼が急増した。「予想を超える大きな反響だった」と執行役員MD本部の河合重宏本部長(以下、河合氏)は振り返る。

元々、羽毛リフォームは工場の閑散期対策として1ラインを稼働するだけの“脇役事業”だった。テレビで紹介する以前も「高額で購入したため捨てられない」「いただいたものなので処分しづらい」などの理由で需要はあったものの、1日当たり約30枚の自社工場での加工と、5~6社の協力工場での加工でまかなっていた。

そうした中、工場新設の計画が持ち上がった。日本国内で1人当たり羽毛布団を2枚以上持っていると仮定した場合、換算すると約3億枚となる。加えて、東京23区では20年以降、年間100万枚以上の布団が廃棄処分されている現状がある。仮に全てが羽毛布団とした場合、処分する過程において1800トン以上もの二酸化炭素(CO2)が排出される計算だ。「羽毛は定期的にメンテナンスをすれば100年以上使える天然資源。大きな市場でもあり、今後必ず必要になってくる事業」(河合氏)と、約3年前、会社を挙げてリフォーム事業の強化に乗り出した。番組放送後の反響も「工場を新設する上でも、世の中に求められている事業だと再認識できた」(河合氏)と、事業推進への確証となった。

新工場は、既存工場から直線距離で約300mの場所に建つ。元は農地として使用されていた敷地で、土地の取得に約1年を要した。工場の完成は来年3月で、設備は二段階に分けて導入。まず3つの羽毛洗浄ラインを4月末を目途に設置し、5月から稼働を開始する。その後、既存工場にある1ラインを含めた3ラインを設置し、フル稼働は7月頃の予定。これにより、既存工場では新しい布団のみを生産する。

まず羽毛布団を解体し、内側の羽毛を直接洗浄する。この時に汚れやごみも取り除く

リフォームの工程は、➀羽毛布団を解体②羽毛を直接洗浄③乾燥④充填・縫製⑤検針・出荷――となる。ほこりやごみを取り除いて汚れを洗浄し、羽毛が広がるよう乾燥させる。新しい側地に新しい羽毛を追加して詰め直し、最後に異物の混入などがないか確認して出荷する。作業に際しては、ほかの顧客の布団と混在しないよう、徹底した個別管理の下で1枚1枚加工を行う。

新しい羽毛も加えて布団に充填する。新品と見間違えるほどのボリューム感が復活

羽毛布団のボリュームがなくなるのは、摩擦などで羽毛が絡まり、いわゆる「毛玉」のようになってしまうのが原因。羽毛を洗いながらほぐすことで、羽毛本来の広がりを取り戻す。ちぎれた羽毛などは除去し、目減りした分量以上の羽毛を新たに足す。リフォーム前後での見た目の差は歴然で、想像以上にボリュームアップして手元に戻ってくることから、「顧客からはかなりの好評を得ている」と河合氏。羽毛リフォームをした顧客の家族からの依頼にもつながっているという。

「リフォームデザイン」は、ディズニーの当時の貴重なアートワークや、ヴィンテージ感のある映画用ポスターのデザインを揃えた

人気のライセンスブランドを活用して、若い世代にも訴求を強める。来春に、今年創立100周年を迎えたディズニーのデザインを用いた「リフォームデザイン」を展開。打ち直した羽毛布団の側地を「MODEL SHEET」と「POSTER ART」の2種類のデザインから選べる内容で、価格は2万7280円。

工場完成後は、年間5万枚の加工枚数を目標に掲げる。河合氏は「大分多い枚数」としながらも、他社の協力工場と引き続き連携して達成を目指す。同時に、枚数増加に伴う管理状況などを考慮し、今後は作業工程の機械化や自動化も課題に挙げる。

製造における環境負荷の軽減にも取り組む意向で、水の再利用や太陽光発電などの採用を計画する。太陽光の活用についてはパネルの設置も考えたが、屋根に設置するとなると構造上必要なものが増え、建設コストがかさむ。「現在は(重量のある)パネルではなくフィルム状のものや、発電できるアスファルト用の塗料まで開発されている。技術革新が日に日に進んでいる分野だけに、時期を見計らって適した設備を選択していく」と、河合氏は述べる。

羽毛布団のリフォーム事業強化を決めた当初は「本当は新しい商品を売りたい」という希望と、「リフォームを勧めると商品が売れなくなってしまうのでは」という懸念もあった。しかし「1番初めに良いものを買っていただこう。(そのために)良いものをつくろう」(河合氏)と、質の高い商品を適正な価格で売ることに立ち返ったという。

「リフォームは顧客の満足度が高く、メンテンスのサービスを1つを加えることで単価アップにもつなげられる」と、河合氏は可能性を示す。「ものづくりの昭和西川」の名にふさわしい羽毛布団のリフォームを推し進める。

(中林桂子)

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