三陽商会の「アマカ」、20周年企画がヒットし売上げ好調
2026/03/09 12:00 am
昨年に20周年を迎えた、三陽商会の婦人ブランド「アマカ」が好調だ。20周年記念の販促施策や限定商品がヒットし、2025年度下期(25年9月~26年2月)の売上高は前年を大きく超えた。特にコートが4割増と大幅に伸長し、全体をけん引。消費者の選択眼がシビアになる中、「価格と価値のバランス」を追求したことが奏功した。
アマカは「エスプリあるスタンダード」をコンセプトに、2005年にデビュー。ベーシックなアイテムを軸としながら、時代の空気感も取り入れた提案をしてきた。事業統轄本部事業本部婦人服ビジネス部アマカ企画課の田中真一課長は「きちんと感や上質感を大切にしながら、かつ日常使いできる服を求めるお客様が多い」と話す。周年は改めて原点を見つめ直し、顧客へ提示する年となった。
13万円超の高価格コートがヒット
事業統轄本部事業本部婦人服ビジネス部アマカ企画課の田中真一課長。手に取っているのは、25年AWにヒットした「サンヨーコート」とのコラボコート
周年期間(25年3月~26年2月)は毎月、素材・縫製に徹底的にこだわった「アニバーサリーピース」を発売。リバティ社の生地「タナローン・コットン」を使ったブラウスを、毎月1柄ずつ発売する「タナローン・ツアー」も行った。リバティプリントを生かしたアイテムはアマカの強みの1つであり、20周年を記念したオリジナルのリバティ柄「リボンメダリオン」も制作された。
アニバーサリーピースの中では、三陽商会のコートブランド「サンヨーコート」とのコラボコートが特大ヒットとなった。サンヨーコートの既存の形をベースに、アマカらしいテント型シルエットにアレンジしたコートで、取り外し可能なライナーにリボンメダリオンを使用する。コート専業の自社工場「サンヨーソーイング 青森ファクトリー」で生産し、襟部分を手まつりで縫製するなど、細部にまで職人技が光る。
価格は税込13万円台で、アマカとしては挑戦的な価格設定だ。さらに発売は9月と早い時期で、社内には懸念の声もあった。しかし事前の説明会には「青森ファクトリー」の工場長も参加し、店頭スタッフに対して商品の魅力やこだわりをしっかりと説明。スタッフ自身が価値を理解し、説明できる状態を構築した。その熱量が顧客へ伝わったこともあり、コートは定価で全て完売した。
田中氏は「単に安ければ買っていただけるわけではなく、逆に高くても、それに見合う価値が商品にあり、お客様に伝われば買っていただける」と述べる。また、「アマカのこだわりであったり、ブランドの考え方も一緒にお客様にお伝えできた。これが秋冬シーズンの立ち上がり時期だったため、勢いづいた」と振り返る。
キャッチーさを出したデジタル施策も奏功
「アマカレッド」のコートが注目を集めたアニバーサリーピースのウェブ訴求
こうした取り組みはコアなファン層が主なターゲットだが、新客の獲得に向けた取り組みも行った。その1つが、着せ替え人形「リカちゃん」のアンバサダー企画である。20周年のスペシャルアンバサダーとして、実際の商品と同じデザインのウエアを6スタイル制作し、リカちゃんが着用。ブランド公式サイトやSNSに登場し、店頭にもリカちゃんが巡回して、反響を呼んだ。
販促面では、デジタルコンテンツの拡充にも注力した。アマカはリバティなどのプリント柄や、ブランドのアイコニックカラーである「アマカレッド」など、ウェブ上でも目を引く柄やカラーを擁している。そのため、これまでのモデル着用画に加えて、より商品にフォーカスした物撮り画像を増やし、デジタル広告を強化した。真夏以外に着用できる「265日ニット」といった、キャッチーな謳い文句の商品も投入した。
これによってブランドサイトのセッション数は、昨年同時期と比較して約4倍に増え、新客の流入につながった。「目を引くキャッチーさと、ものづくりの本質的価値。これを両輪で走らせ、相乗効果を出せたことが、20周年の大きな成果」と田中氏は話す。
価格と品質のバランスで「最も価値を感じるブランド」へ
26年春夏は、着用期間の長いライトウェイトコートを強化する
次の一手として、26年春夏シーズンは「軽衣料の強化」「エントリープライスの拡充」「新規顧客の獲得」を軸に掲げる。猛暑の長期化を背景に、羽織アイテムや着用期間の長い商品を重点的に開発。エントリープライスの商品は、単体で完結するのではなく、コーディネート提案しやすいMD構成にすることで客単価の向上を図る。セレモニーなど春のオケージョンに向けたアイテムは、ハレの日からデイリーまで着回せる幅の広さが好評で、セット販売につながっている。
「アマカマルシェ」では、新たにエプロンなどのライフスタイル雑貨も提案する
さらに、ライフスタイル雑貨を含むカプセルコレクション「アマカマルシェ」も展開する。キッチン用品とウエアを掛け合わせたコレクションで、新たな接点を創出するとともに、ギフト需要なども狙っていく。
田中氏は「ブランドの価値を守りながら、より多くのお客様に手に取っていただけるブランドに進化させていきたい」と語る。安さを競うのではなく、価格と品質のバランスに磨きを掛けることで「最も価値を感じてもらえるブランド」を目指す考えだ。
(都築いづみ)