キリン、ビビッドガーデンと協働し、規格外のふじりんごを使った「氷結」と「午後の紅茶」発売

2025/11/25 1:18 pm

キリンビールは18日、産直通販サイト「食べチョク」を運営するビビッドガーデンとの初協働による「氷結mottainaiふじりんご」を発売した。同社は「氷結mottainai」を通じて規格外果物のフードロス削減に取り組んでおり、今年4月に立ち上げた企業横断の「モッタイナイ!を、おいしい!に。プロジェクト」に食べチョクが参画。キリンビバレッジもグループを横断して参画し、12月2日に「午後の紅茶mottainaiふじりんごティー」を発売する。3社協働を実現させ、「氷結mottainaiふじりんご」は約9.6トン、「午後の紅茶mottainaiふじりんごティー」は約3.9トンの長野・青森県産のふじりんごのフードロス削減を目指す。それぞれ約21万ケース、約20万ケースの販売と、農家への寄付金各約480万円を目標とする。

キリンビールは2024年に、気候変動や後継者不足などの果物農家が抱える課題解決に貢献する目的で「氷結mottainai」シリーズを発売した。これまで横浜市の浜なしや山形県の尾花沢すいかなどの規格外果物を使った商品を販売しており、売上げ1本につき1円を果実農家支援に活用している。

商品や取り組みに共感した客数は約536万人に上り、さらに取り組みを広げるため、今年4月に企業を横断する「モッタイナイ!を、おいしい!に。プロジェクト」を立ち上げた。執行役員マーケティング部長今村恵三氏は「27年までに年間250トンの果実のフードロス削減と購入者1200万人、100軒の生産者の参加が目標」と述べる。

安曇野ファミリー農産のりんご園を訪ねるスタッフと中村隆一氏(中央)

食べチョクは全国に1万軒以上の生産者ネットワークを築いており、食品ロスを課題と捉えてきた。今年6月に行った、生産者を対象とした気候変動による影響についての独自調査では、58%が収穫量の減少と回答する中、29.5%が規格外品の増加、25.7%が訳あり品の増加と答えていることから、プロジェクト参画に意義を見出す。

発表会にはビビッドガーデン事業開発の大塚美雪氏が対応する規格外のふじりんごの試食コーナーも登場した

キリンビバレッジは、「午後の紅茶」の社会貢献活動として、13年から茶葉の産地であるスリランカの紅茶農園の支援、21年には熊本県の復興支援、24年には全国のコミュニティを応援する取り組みを行っている。本プロジェクトでは“モッタイナイ果実”への関心を高め、生産者と子供たちをつなぐイベント開催を予定。グループ横断のCSV活動の推進が図れる上、「当社が参加することでさらなる若年層との強い接点を築け、プロジェクト浸透に貢献できるのではないか」とマーケティング部午後の紅茶シニアブランドマネージャーの原英嗣氏は語る。

「『氷結mottainai』は商品のコンセプトに共感した20~30代を中心とする若年層に支持されており、購入を後押ししている」とマーケティング部氷結ブランドマネージャーの資逸晴亮氏は説明する。同社が若年層を意識するのは、購入者とともに果実のフードロス削減や農家支援に取り組み、人と未来を明るく豊かにする持続可能な社会の実現をプロジェクトのビジョンとすることに起因する。マーケティング部氷結ブランド担当の當麻汐音氏の「自分自身、持続可能な未来の実現の責任ある世代だと思っている」という言葉は力強い。

「20~30代のメンバーが集まった、社会に貢献したいという思いを持つスタートアップ企業として、熱い思いやスピード感で盛り上げていきたいと思っている」とビビッドガーデン執行役員新規事業開発責任者松浦悠介氏も語るように、若年層が中心となってプロジェクトは進められる。

トークセッションを繰り広げる加藤華氏、當麻汐音氏、中村隆一氏、吉川和亨氏、松浦悠介氏(左から)

マーケティング部午後の紅茶ブランド担当の加藤華氏は「入社を決めた理由の1つが“もったいないプロジェクト”だった。商品を通じて生産者や社会全体にも貢献できるプロジェクトメンバーとして参画できること大変嬉しく思っている」と目を輝かせる。

生産者の安曇野ファミリー農産専務取締役中村隆一氏とRED APPLE取締役吉川和亨氏も若年層だ。「ふじりんごは甘味と酸味のバランスが良いりんごの王道。贈答用に人気だが、商品になるのは3割程度しかなく、綺麗につくることが難しい品種。りんごの収穫は8月から始まり、11~12月にふじを収穫するため、最近は特に気候変動などの影響でさらに難しい。毎年、規格外で破棄されるりんごを見てきている。プロジェクトに共感しており、同世代が中心となって取り組めることにワクワクしている」と中村氏も吉川氏も口を揃える。

24年度に収穫された規格外のふじりんごを使用している

キリングループを横断する新しい取り組みで誕生した「氷結mottainaiふじりんご」と「午後の紅茶mottainaiふじりんごティー」。どちらもふじりんごの甘みと酸味のバランスが程よく、香り高い。

(北野智子)

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