アラ商事、ギフトと“ジャストシーズン”の提案強化

2025/07/03 12:00 am

アラ商事はギフトと“ジャストシーズン”の提案を強化する。ギフトは、ライセンスブランドの「ミラ・ショーン」や「ミッシェル クラン」、「ムーミン」などでノベルティや特別なパッケージを用意して訴求。贈答需要を掘り起こす。ジャストシーズンは文字通り、季節に合わせた着こなしを例示。新たな需要を引き出す。

「ミッシェル クラン」などでギフトの訴求を強める

ビジネスウエアの多様化などを背景に、近年はネクタイの売れ行きが良いとはいえない状況だ。アラ商事は「もはや大量に買ってもらえる時代ではない」という前提で、「(価値につながる)伝統的な技術やファッション性などを追求しながら、一本一本を買ってもらうために、満足できる商品を満足できる価格で提供していく。ネクタイを身に付けると、仕事の在り方や気分が変わるくらいの印象を与えたい」と意欲を燃やす。

例えばオリジナルブランドの「アールダム」では、最高品質であるブラタク社の「6Aシルク」や服地感覚のテクスチャーと起毛素材風のシルクを生かした「ウーリー シルク」を用いたり、生地の色柄やネクタイの幅などを選べる「カスタムオーダー」をイベント風に展開したり、トレンドの色柄を採り入れたりして、購買意欲を喚起する。

服地感覚のテクスチャーと起毛素材風のシルクを生かした「ウーリー シルク」

特にカスタムオーダーは、イベントとしても成立する。夏場は「クールビス」の影響で、ネクタイの売上げが落ち込むだけに、それを補う販促にもなり得る。同社は「全体的にネクタイ売場は縮小され、他のアイテムとの連携や夏場の需要が多い扇子が広がる傾向だ。秋に向けたカスタムオーダーのようなイベントを実施し、新しい顧客を創出する必要性を感じる。百貨店も夏の売場改革を期待している」と指摘する。

「アールダム」のカスタムオーダーはイベントにも役立つ

カスタムオーダーはSDGsにも適う。大量生産ではなく、一人一人に合ったネクタイを販売できるからだ。リアル店舗に「体験価値」が求められる中、客に“選ぶ面白さ”も伝えられる。同社はネクタイのアップサイクル、リサイクル、リメイクも手掛けており、SDGsに関連する企画にも貢献が可能だ。それもアピールし、新たな販路を切り拓く。

商品の満足度を高めるだけでなく、ギフトやジャストシーズンに照準を合わせ、買上げの動機を増やす。ギフトについて、同社は「もらった人が、そのブランドのファンになってもらえるような商品が必要。ブランドの表現で何が重要かを徹底的に見詰め、デザインの精度を上げる。それがギフトにもつながる」と方向性を説明する。ノベルティや特別なパッケージは用意するが、まずは商品の魅力を高める。

ジャストシーズンの提案では、ビジネスシーンで夏の定番となりつつあるジャケットとTシャツのスタイリングに、ドレッシーさを加えられる小さいサイズのスカーフ「ティーニー」を打ち出す。「40代以上の男性がファッションを通じて若々しさを見せたい気持ちは分かるが、エレガントさも必要ではないだろうか。扇子も交えて夏に合ったスタイリングを発信し、衝動買いを促す」(同社)。

ビジネスシーンでTシャツの着用が増えているが、ミニスカーフ「ティーニー」を用いると、ドレッシーな雰囲気を演出できる

通常のネクタイと異なり、裏地や大小剣の先端の芯地がなく、非常に軽い「エアリータイ」も夏場に関心が強まるため、百貨店のネクタイ売場などに試着用を提供。軽さを気軽に体感できるようにして、購入につなげる。

秋に向けては、ウールタイをあらためてPRする。「年々残暑が長引き、手を出さない売場やショップが多いが、ダンガリーシャツやネルシャツ、デニムシャツなどと合わせると目を惹く。そのコーディネートを提案するように売場やショップに求める。服装と連動させた方が分かりやすいアイテムだ」と、同社には勝算がある。

マフラーの拡販にも注力する。ネクタイで培ったシルクのクオリティを強みに、売上げは右肩上がりで推移。昨年は一昨年の約2倍を売上げた。極上の肌触りや柔らかさ、軽さが特長のアールダムの「シルクスフレ」、オリジナルブランド「フォスカ」で手掛ける通常のマフラーより小ぶりでビジネスバッグに入れやすいミニマフラーも人気だ。マフラーやミニマフラーは品揃えを拡充し、勢いに弾みを付ける。ライセンスブランドの「ダックス」や「ピエール・カルダン」などではカシミヤのマフラーも販売。素材の幅を広げ、新たな需要を取り込む。

売れ行きの良いマフラーの拡販にも挑む

ネックウエアに限らず、リアル店舗は客が足を運びたくなる動機の創造に余念がない。「ただ待っていても、お客様は来ない。売り方を工夫しなければならない。売場やショップとは、パンツやソックスなど従来にない組み合わせでの提案も可能か協議する。コーディネートを軸に、ブランドらしさを示せば、ファンは増えていく」と同社。作り手と売り手の“共闘”で、ネックウエア市場を盛り上げる。

(野間智朗)

ピックアップ